卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場の課題

業務規程「その他ルール」の考え方

今年12月からの卸売市場の認定申請に向けて、各地市場の業務規程つくりが本格的になってきた。 農水省としては、従来の「業務規程例」サンプルはつくらない方針だが、開設自治体や業界団体からの相談には精力的に応じているので、連休明けから5月中には各…

民営大型市場の特徴

全国には中央市場に匹敵する規模の民生民営市場が多くある。 もともと市場流通は民営市場だけであったから、公設市場に入場せず民設民営市場のまま営業している市場が最も多いことは当然である。 今も卸売市場の8割が民営市場である。 大型市場となったケー…

民営化した公設・準公設市場

公設市場から民営市場への転換は、第8次卸売市場整備基本方針以降、急速に進んでいます。公設あるいは準公設(第三セクター)市場から民営化した主な市場は次の通りです。 長岡公設青果市場 青果 平成14年4月民営化 長岡中央青果、敷地面積2万3千平方米、半…

民営化の方式-民営化の検証2

公設市場を民営化するケースとして次のような方式があります。 ①市場を廃止し民営化する場合 卸売市場を廃止、つまり廃場する場合の多くは、公設公営の場合は統合して大型市場となる場合で来年度3つの中央市場を1カ所に移転統合するケースがほとんどです。…

民営化をめぐる歴史的経緯-民営化の検証1

卸売市場はどこまで民営化が進むのでしょうか。どこまで民営化を進めるべきなのでしょうか。改正卸売市場法の大きな特徴の一つが、公設市場と民設市場の垣根がほとんどなくなったことです。 全国的な卸売市場整備は、大正12年の中央市場法から始まり、昭和46…

良い年を過ごすために

卸売市場業界にとって、今年は文字通り、歴史的な転換期となりました。10大ニュース風に言えば、間違いなく一位は、2018年6月22日に制定・公布された改正卸売市場法となるでしょう。 10月には、政省令と食品等流通合理化促進法が公布、即日施行されました。…

卸売市場の命運にぎる物流-その2

来る人のための物流から届けるための物流施設を 生鮮食料品における市場流通は、国の参考図にもよく出ているように産地から卸売場へ運び、そこから仲卸・買参人に販売し、仲卸・買参人は卸売場からの商品の移動は全て責任を持つ。施設整備は全てこの流れを基…

卸売市場の命運にぎる物流-その1

物流からロジスティクス、SCMに 最近知ったのだが、役所用語に物流という言葉はないらしい。 改正卸売市場法にも「流通の効率化」という言葉が使われているが、これではイメージが広すぎてなんでも入ってしまう。物流を文字通り解釈する…

市場施設整備の考え方

豊洲市場の整備がようやく終わった。しかし、今後も市場整備は続く。京都や鹿児島が再整備中であり、広島、和歌山、横浜など次々に再整備を計画している。地方市場も成田が20億円以上の国の支援を受けて整備中である。 今後の施設整備は、1.物流、2.品質管理…

築地ノスタルジー

主人の居なくなった館はこんな感じなのだろうか。 築地市場最終営業日となった2018年10月6日、土曜日の混雑ぶりと引っ越し作業が始まった7日の築地市場を見た。すでに個別に引越しの準備は進めていたので8〜10日、三日間が引越し期間はほとんど混乱はな…

豊洲市場と営業権

「築地市場は閉場しました。豊洲市場をご利用下さい。」と書かれ、正門は閉鎖された 解体工事に入った青果部(10月18日) 豊洲市場が2018年10月11日にスタートして一週間、引越し作業のための暫定使用期間が過ぎて17日で閉鎖された。しかし、閉鎖された18日…

開設者に新たな難問-全仲卸業者の決算書提出義務付け、業務運営報告書に添付

中央市場、地方市場を問わず全ての卸売市場の法人仲卸業者は、毎年、決算書提出を義務付けられることになった。開設者にとって、申請書や業務規程の策定が今後の重要課題になると思われているが、ここに全仲卸の決算書を添付という難問が新たに加わることに…

新卸売市場法のキーワードは物流-「入る物流」から「出る物流」へ

新卸売市場法の法的な整備が着々と進んでおり、現在、全国で農水省の説明会が再び行われている。「再び」ではない、3回目か4回目になるだろう。 業界幹部や学識経験者を集めた従来の委員会方式から、直接、法律を作っている部門が業界に意見聴取や説明を行う…

豊洲市場の果たす役割と今後の展開-青果部を主とした検証

改正市場法によって卸売市場はどのように変わるのだろうか。 改正市場法の方針が市場施設面でどのように変化するかを、平成30年10月11日に開場する豊洲市場を通して検証する。(「農産物流通技術2018」より一部改稿) 1.築地市場の特徴と機能 築地市場の開…

パーソナル情報システム(株)PJS第29回全国生鮮フォーラム

2018年8月28日から30日の三日間、東京築地のJJK会館で開かれたパーソナル情報システム(株)(PJS)の第29回 全国生鮮フォーラムを取材した。 毎年2回、多彩な講師を招き無料で行われていて今回で29回を数えるフォーラムである。それにしても今回は、主催者…

業務規程・申請書をめぐる課題-その3

8月17日、24日に自民党農林部会、水産部会が相次いで行われ、基本方針、政省令についての与党内での説明・調整が終わった。 8月30日から一ヶ月間の「パブリックコメント期間」《行政の政策方針決定に際して行われる、国民に対して公(パブリック)に、意見…

業務規程・申請書をめぐる課題-その2

開設者の懸念 改正市場法が19条となったことに象徴されているように、卸売市場の管理運営に対する行政関与は明らかに減っている。行政関与が減っていることは明らかだが、問題は行政関与の減少と公共性の減少は必ずしもイコールではないことである。改正市場…

業務規程・申請書をめぐる課題-その1

改正市場法が成立し、2020年の施行に向けた準備が進んでいる。 9月以降に予定されている農水大臣が定める基本方針と政省令を踏まえ、2020年6月の改正卸売市場法の施行日に向けた都道府県の条例、市場業務規程と申請書の作成準備に入る。 以下、総…

大阪府中央市場指定管理者、1億円の利益と活性化事業

2018年7月29日付け、指定管理者「大阪府中央卸売市場管理センター(株)の1億円の利益確保」に続く市場活性化事業の取り組みである。 一年間の主要な活性化事業 トイレ改修を第1期に続き重点事業として取り組み、29年度は未改修であった6か所の改修を終…

小池知事の安全宣言

7月31日、前日に豊洲市場で行われた専門家会議の報告を受けて、小池都知事は豊洲市場の安全宣言を出した。 安全宣言は、かねてから業界が都知事に対し要請していたことだが、これは前日に豊洲市場で開かれた専門家会議(平田健正・座長)の取材陣に対する説…

大阪府中央市場指定管理者、1億円の利益確保

改正市場法では行政関与の減少と開設自治体による公共性、市場会計の健全性が求められている。 大阪府中央卸売市場が全国に先駆けて導入した指定管理者制度は、行政と業界の連携、効率性と公益性の両立を安定して維持しており、改正市場法の下での公設市場の…

築地大物業会を取材して

東京築地魚市場大物業会の第30回定時総会を取材した。 2018年10月11日の豊洲開場後は「東京豊洲市場大物業会」となるので、この業会名を使うのも最後の総会となる。大物業会は、築地市場で常に「おおもの」という呼称にふさわしいキングの座を占め続けている…

トータル物流の時代

市場流通の世界では、水産と青果、花を1社で扱う運送業者は少ない。それは法的に規制されていたからではなく、商品特性から一緒には取り扱えないという考え方で、サプライチェーンは別個につくられていたからである。 ところが築地市場にある「永井運送」は…

豊洲市場9月13日に開場記念式典

小池知事が出席した「市場移転に関する関係局長会議」で、豊洲市場の開場に向けた取組状況、環状2号線の整備、築地再開発の検討状況、の三点について次のように決定した。 ①10月11日開場に向けた記念式典は9月13日に行われる。 開場は豊洲市場になる見込み…

一般会計操出基準

改正市場法の根幹は原則規制から原則自由に転換したことである。 そのこと自体は問題ないのだが、自由と自己責任はセットである。 言い換えれば公設市場における市場会計のあり方であり、行政責任分と業界責任分の考え方の問題である。 市場会計において行政…

市場会計の健全性

6月14日の参院農林水産委員会において、卸売市場法と食品流通構造改善促進法改正案を付帯決議付きで採択し、翌15日の参院本会議で可決成立した。 付帯決議は法律の重要な変更の際によく出されるもので、今回の改正法は、民間も中央市場開設が認められること…

公設市場が認定申請できない?

先だってある市場開設自治体の職員から「中央市場であっても卸売市場の認定申請書を出せないかもしれない」という衝撃的な話しを聞いた。 どういうことなのか。「開設区域の廃止や商物分離など取引規制の廃止によって開設自治体が税金を投入する根拠がなくな…

開設者の公共性と業者の効率性

改正市場法によって、市場業者に対する基本的な取引規制廃止(規制する自由も含めた)は明確になり、一方では公設市場の開設地方自治体の公共性維持も求められている。改正市場法では規制廃止と公共性の維持、言い換えれば、市場業者と開設者の経営責任を分…

立体化市場の立体活用

京都南部市場、大阪鶴見フラワーセンター、神戸本場を回りました。ついでに京都駅に途中下車し嵐山から広隆寺の弥勒菩薩を見て、丸に十の字の島津製作所の前を通って嵐電で帰ってきました。 先だって、久しぶりにTVでノーベル賞受賞者の田中耕一先生を見て…

開設区域と商圏

中央市場の開設は、実態としては各自治体が計画し国が認めるという手順なのだが、法的には農水大臣が全国的な整備計画に従って開設区域を定め許可する手続きであり、卸売市場法の最も重要な開設要件である。 この「開設区域」という概念は、中央市場の配置と…