卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

市場施設整備の考え方

豊洲市場の整備がようやく終わった。
しかし、今後も市場整備は続く。
京都や鹿児島が再整備中であり、広島、和歌山、横浜など次々に再整備を計画している。
地方市場も成田が20億円以上の国の支援を受けて整備中である。

今後の施設整備は、1.物流、2.品質管理、3.情報、4.輸出の4つの機能を中心に合理化計画を立て、農水大臣の認定を受けて10分の4以内の補助を受けることができる。

10分の4といえば従来よりも高いようだが、「予算の範囲内」であることは当然である。
前にあげた中央市場が軒並み金を遣い、成田も国家戦略特区関連事業の国策市場である。
国策市場といっても当初の国の補助金は事業費の10分の1にすぎず、13億円程度であった。
事業費が150億円になり、さらに180億円にはなるだろうという事態を受け、地元関係者が国に直訴し、やっと20億円程度にあがったという事情がある。

こうした状況を見ていると、市場再整備は法規定されているが、実際に地方市場が再整備を行う場合は国の支援はあまり期待できないだろう。
当てにするなというと、国のお先棒を担いでいるようだが、当てに出来ないことは事実である。

どうすればいいか。
一つ目は、公設市場であっても民間が発注できる方式を考えること。見積もりが3割違う。
大阪府中央卸売市場は、大阪府が作るべき施設を指定管理会社が、府の業務委託を受けて建設している。

二つ目は、設計も含めて施設に金をかけないこと。
都市部の拠点市場を除けば多くの市場施設は平屋か二階で十分である。
躯体はスケルトンだけで機能強化は業界に任せればいい。
管理棟だけが高層という市場もあるが金食い虫である。「管理事務所」があればいい。

工事は鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)構造ではなく、RC構造でも耐震基準は十分クリアできる。
豊洲6000億円のバブルの巨塔の二の舞をすべきではない。

三つ目は激変緩和をしないこと。
段階的に使用料を上げる方式だが、この本来の趣旨は、開場後は必ず取扱いが増え利益が増えるという中央市場初期の施設整備の考え方である。
現在では、目先の負担は軽いように見えるが、かえって業界負担が重くなる毒饅頭である。
激変緩和をするくらいなら償還期間を長くして使用料の低減を図るべきである。

四つ目は、計画は立てても、工事発注はあと1~2年待つべきである。
オリンピックまであと2年、マンション、ホテル建設はラッシュだが、20年以降は早晩、建設業界は右肩下がりになる。資材高騰も必ず止まる。

今から検討し、合理化計画をたて、国の認定を受けることができたとしても工事は20年以降になるだろうが、基本的な考え方はこうした視点が重要だろうと思う。

公設市場の施設整備は行政責任で行い、業界負担の軽減は激変緩和等で行うという施設整備の、常識の再検討をすべきではないだろうか。