7月31日、前日に豊洲市場で行われた専門家会議の報告を受けて、小池都知事は豊洲市場の安全宣言を出した。
安全宣言は、かねてから業界が都知事に対し要請していたことだが、これは前日に豊洲市場で開かれた専門家会議(平田健正・座長)の取材陣に対する説明会で「(東京都の汚染対策の結果について)科学的な豊洲市場の安全は確保されている。小池知事にも報告した」と説明したことを受けた安全宣言で、いささか遅きに失したとはいえ当然の責務である。
豊洲市場の安全確保に費やした金額は約900億円。専門家会議の提言を受けて行った今回の追加工事は38億円、今後も地下ピット内の管理などで「年数億円は施設を使用する限り永遠にかかる」(平田座長)ことになっており、6千億円という建設費・安全のための投資は、卸売市場では、史上かつてなく、今後も考えられないだろう。
こうしたことが現実に可能になった要因は、一つは現在の築地市場23万㎡が銀座に接する日本の中心地だということである。
市場開設に係る初期投資に充たる収益的収支で、収入=築地市場売却益、支出=豊洲市場建設費、と考えれば、例え6千億円かかろうと赤字にはならないという計算ができる。
第二は、数十年にわたる移転か現在地かをめぐる紛糾、土壌汚染に端を発した安全問題が、移転に賛成か反対かではなく、移転が可能かどうかという問題になったことである。
この論議に輪をかけて紛糾したのが、東京都による「土地、地下水の無害化」である。
築地市場における業者説明会で、専門家会議は「土壌、地下水の完全無害化は、有楽町層と言われる関東全域の地層が対象になり不可能、市場で働き市場に出入りする人々が安心して動くことが出来る地上での安全確保をめざす」と説明し紛糾している。
また、取材陣から「専門家会議は全て公開が原則なのに、この会議はなぜ公開で行われないのか」と質問され、「専門家会議としては年度末に小池知事に報告書を出した段階で終了しており、それは皆さんの前で報告している。この会議は、東京都の追加工事に対する結果の確認をして欲しいとの要請で行ったものであり、論議の場ではない」と述べている。
こうした経緯を考えれば、「豊洲市場の市場としての安全性は確保されている」とする結論は妥当なのではないだろうか。
地震や津波の震災が起きれば液状化で地下の汚染物質が吹き出すのではないか、という意見も前に出されていたが、確かにそういう危険はあるだろうが、その時は「豊洲市場の安全」ではなく「東京の安全、東京都民の安全」が問題になるのではないだろうか。
確かに東京都の対応は先だって行われた築地移転に伴う解体工事の住民説明会でも、様々な意見が出るのを承知の上で、現場の工事責任者である課長に全ての対応を委ねるなど、誠意のなさが目立っているが、豊洲市場開場を9月11日に控えた今、豊洲市場の成功は東京都の責任ではなく市場業界の責任に移っている。
豊洲市場は今後の市場流通の成否を占う試金石であり、全国の市場流通に対する責任を負っている。
目を顧客に向けた取り組みを進めて欲しいと思う。