卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

食取材の旅

明けましておめでとうございます。 昨年も各地の市場を取材しました。そうした中で印象に残った各地の風景、食事のいくつかを紹介します。 1.旭川・富良野に12月行った。最高気温が零下7度、最低気温は零下12度だった。関東で想像するほど寒くはなかったが…

横浜魚類経営改善軌道に〜松尾新社長体制スタート (下)

(全水卸2024年11月号より転載) ― 横浜魚類は本場、南部、川崎北部の3市場に展開されています。どのように3市場間の連携を行っているのでしょうか。 従業員中心の三市場合同会議 松尾=3市場の合同会議を月1回やっています。従業員中心で役員はオブザー…

横浜魚類経営改善軌道に〜松尾新社長体制スタート (上)

(全水卸2024年11月号より転載) 横浜魚類は令和6年3月期決算で1.8億円の経常利益を計上した。コロナ禍の下で5年連続の黒字となり、経営改善が軌道に乗った。令和6年6月、18年続いた石井社長の後任として松尾英俊社長が就任、長い経営危機を 脱し第90…

地方市場の活性化が目立つフォーラム

130名を超す超満員となった生鮮フォーラム(10月17日豊洲市場) 熊本で行われた全青協秋の大会と豊洲市場で行われたパーソナル情報システム(PJS)の生鮮フォーラムに参加した。いずれも100名を超す参加者があり盛況だった。 とりわけ豊洲市場で行…

公設市場の整備費を検証する1〜民設市場と公設市場におけるコスト感覚の違い

(全国青果卸売市場協会会報「全青協」2024年9月号より転載) 当誌(全青協)6月号において、公設市場における機能強化と施設整備費について問題提起をしました。 農水省の資料ですと、全国65の中央卸売市場の5割弱にあたる30市場が40年以上、大規模整備を…

地方市場の活性化に向けて〜石巻青果 菊地社長に聞く

(全国青果卸売市場協会会報「全青協」より転載) コロナ禍の4年は、第一次産業の重要性を改めて認識させることになった。卸売市場もまたインフラ機能(社会資産としての公共性)を担う重要な社会的位置を占めることになった。人口減と高齢化、そして地球温…

市場中央部3万㎡の余剰地に民間物流棟‐広島市中央卸売市場の再整備基本計画

広島魚市場の佐々木猛社長(左)と 広島水産の山本英治郎社長(右) 全国有数の広さを誇る広島市中央卸売市場全景 物流の24年問題を契機に市場再整備における物流機能と市場機能のあり方が大きな課題となっている。建て替え事業者が決まった広島市中央卸売市…

24年問題と市場流通その3〜北海道における物流と市場卸の変化、マルスイHD武藤社長に聞く

(全水卸24年03月号より転載) 「24年問題と市場流通」第3回は北海道の卸売市場の変化である。コロナ禍や世界的紛争による物流の停滞によって、グローバル経済の限界と食料自給率の向上が新たな課題となっている。北海道の重要性は今後増すことはあっても減…

旅の食日記〜富山駅前「丹霞堂(たんかどう)富山駅前店」で昼食

5月10日、富山駅前にある「丹霞堂 富山駅前店」で昼食をとった。 第3セクター市場全国協議会総会が行われた翌日、完成した富山市場青果棟を視察した。 風の盆で有名な「八尾おわら資料館」を見学した後、12時に富山駅前で解散した。 お昼である。ホテルの…

地方市場卸の活性化‐熊本大同青果に学ぶアメーバー経営

(全青協24年3月号より転載) 2022年の改正市場法を追い風にした卸売会社の典型的な成功事例が熊本大同青果とR&Cながの青果(以下:R&C)だろう。 経営手法は全く違う。R&Cは、長野を拠点に各地にグループ市場を展開する規模の拡大を図ってきた。 …

旅の食日記〜北九州、広島、岡山

3月下旬、北九州中央市場、広島中央市場、岡山中央市場を取材した。 北九州中央市場では、卸売市場として初めてのフェリーによるモーダルシフトを行った北九州青果の百合野社長の動画インタビュー(パーソナル情報システムの生鮮フォーラム用)を行った。 …

取材メモ 冬から春へ 石巻・山形‐雪が降り、山も海も喜んでいる

JR石巻駅では石ノ森章太郎の仮面ライダー、サイボーグ009が迎えてくれる 寒い時は寒く、暑い時は暑い。 日本の四季はこの当たり前の季節の変動を受け入れて、それに合わせて生活してきた。 2月、宮城と函館に行き、車中から降り頻る雪を眺めながら、前夜…

佐賀青果に学ぶ‐県下8市場取扱高の70%シェア

佐賀青果市場 民設民営の地方卸売市場 「佐賀青果市場」が存在感を増している。佐賀青果は3年連続で100億円を突破、佐賀県下にある8青果市場の取扱高の約7割を占めている。交通の要衝にある立地とJA系市場の利点を活かした機能を整備し、博多、北九…

さっぽろ雪まつりを見た

さっぽろ雪まつりを見た。 2月7日と8日、札幌に行った。 仕事なのだが、飛行機を取るときに満席に近かった。札幌はやはり人気だなと思っていたら「さっぽろ雪まつり」だった。 パソコンとスマホがあれば「一人在宅勤務」なので、どこでも仕事ができる。 札幌…

24年問題と市場流通その2〜運送業界の立場から

大きく被災した能登半島にある七尾。市役所正面には無名塾・仲代達矢氏筆の「市民のねがい」がある。七尾市は和倉温泉に接し与謝野晶子の歌碑もある文化都市である 明けましておめでとうございます 年末も新年も変わらずめでたいと思っていましたら、能登半…

24年問題と市場流通その1

豊洲市場水産部搬入口 24年問題がいよいよ現実の課題となる。2023年6月に出された「緊急に取り組むべき抜本的・総合的な対策」(物流政策パッケージ)に基づくトラックドライバーの労働時間上限規制が、24年4月からスタートする。市場業界として24年問…

陽気な年の瀬 紅葉見た!フカヒレステーキ食べた!

今年も、ようやく師走を越すことができそうだ。来年6月で79歳。人生の大半を使い果たしている。「余命いくばくもない」の言葉を実感する日々である。 ブログも長く出さなかったが、今年は総務省の地方公営企業アドバイザーの肩書きで年間、数十回の出張があ…

首都圏に100キロ、首都圏対応のSCMの拠点目指す〜ぐんま県央青果 堀 淳 社長に聞く(下)

前号からの続き(農林リサーチ23年9月号より転載) ぐんま県央青果 堀 淳 社長 ―次に他社にとって大きな関心は、どのような経営を行うことで成果を得ることができたのかだと思います。具体的な取り組みでは何が変わったのでしょうか?。 堀=ここまでの実績…

24年問題はチャンス〜首都圏対応のSCM拠点目指す〜ぐんま県央青果 堀 淳 社長に聞く(上)

(農林リサーチ23年8月号より転載) 2023年4月、「レンゴー青果伊勢崎支社」が高崎市総合卸売市場に移転統合、新会社となった「ぐんま県央青果」(堀敦 社長)は、売上、利益ともに群馬県のトップ市場の地位を確立した。3月期決算は、長野本社との帳合…

旅の食日記〜松浦・釜石・函館

猛暑の中で、どういうわけか忙しく、ブログも疎かになった。 知人から、高齢なので健康を害したのではないかと心配された。だからという訳ではないが、各地で食べたものを紹介する。 食に関わる仕事をしている以上、金はなくとも若い頃から出張するとなるべ…

八戸中央青果が新商品「玄米スープ」開発‐産地支援で国内・国外販売目指す

八戸市中央卸売市場の卸「八戸中央青果(横町芳隆社長)はこのほど、県内農産物を主原料にした「玄米スープ」を開発、販売を開始した。 新商品「玄米スープ」は、ナガイモ、ニンジン、ゴボウの3種。いずれも全国屈指の生産高を誇る県産農産物で、これに同じ…

改正市場法による売場の変化‐施設は小さく機能は大きく・京都市場塩干棟

完成した京都市場塩干棟。右が売場、左は冷蔵庫 (「全水卸」2023(令和5)年7月号より転載・一部修正) 改正市場法による規制緩和によって、卸売市場施設もまた変わりつつある。令和5年に入り、姫路新中央市場が1月に移転開場したのをはじめ、富山市場青…

まちと共存する都市型卸売市場‐京都中央市場見学者コース紹介

京都中央市場水産棟の整備が完了した。令和3年の鮮魚部門に続き塩干部門が令和5年3月に完成、引き続き青果部の整備に入る。塩干部門は鮮魚部門に比べると規模は小さいが、売場に独特の工夫があり、塩干仲卸組合と京都市の協力で「売り場のあり方」と「組…

市場施設における卸売場・仲卸売場の変化‐「販売する場」と「物流動線」をセット

(「全青協」2023(令和5)年6月号より) 物流の重要性が高まるとともに、市場施設における卸売場、仲卸売場が大きく変化しつつある。 取引面での規制緩和によって、卸と仲卸の機能は重なる部分が増えている。とりわけ、物流部門は搬入から搬出までの施設内…

総務省アドバイザー支援制度の活用‐PFIの変化による再整備と開設のあり方

私は数年前から総務省管掌の公設市場経営マネジメントアドバイザーをやっている。改正市場法制定前は、依頼を受けた自治体に1回行くだけであったが、結局、1回だけでは済まず、何回もやりとりすることになった。 2年前に補助事業となり年間5回まで国の負…

余剰地の活用‐円満な三角関係が築けるか

各地で取り組まれている市場再整備で大きな問題となっているのが「余剰地」である。典型は富山市場である。市場用地全体を民間に定期借地権を設定、約三分の一を余剰地とした他、公設市場部分も民間が整備、建設し、その施設を行政が借りる方式である。 多く…

国立劇場のサクラ見納め

東京三宅坂の国立劇場三月歌舞伎に行った。 2023年9月、国立劇場は建て替えのため閉場される。歌舞伎、文楽、落語・漫才など伝統芸能は、多く国立劇場で鑑賞してきた。 コロナになって休演が続き、再開しても入りは極端に悪くなっていた。三階席はいつもガラ…

買参新規参入ルール・奨励金改革が焦点に‐新規参入実態調査と参入障壁対応

全国的に整備が進んでいる(3月15日に開業した姫路市中央卸売市場) (農林リサーチ23年4月号より) 各地の市場再整備が進んでいる。令和4年度は1月に入り、冨山、姫路、京都で相次ぎ新施設が完成・開業しているほか、金沢、奈良、大阪、東京など、各地…

豊洲に次ぐ閉鎖型市場完成‐3月13日開業姫路市中央卸売市場開業

完成した姫路市中央卸売市場(2月19日) 姫路市中央市場の移転開場記念セレモシーを取材した。開業後の様子も取材するが、とりあえず2月19日に行われた開場記念式典の模様を紹介する。 (農林リサーチ23年3月号より) 2月19日式典、3月13日開場 令和5年3…

開設と運営の分離すすむ〜公設民営市場時代の到来

新しい市場カテゴリー「民有公営市場」となる富山公設地方市場 (農林リサーチ23年2月号より) 改正市場法による大きな変化として、公設市場から民営市場への転換、廃止など、様々なケースを検証してきた。実践的にも中央市場と地方市場、公設市場と民設市…