卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

総務省アドバイザー支援制度の活用‐PFIの変化による再整備と開設のあり方

私は数年前から総務省管掌の公設市場経営マネジメントアドバイザーをやっている。改正市場法制定前は、依頼を受けた自治体に1回行くだけであったが、結局、1回だけでは済まず、何回もやりとりすることになった。 2年前に補助事業となり年間5回まで国の負…

余剰地の活用‐円満な三角関係が築けるか

各地で取り組まれている市場再整備で大きな問題となっているのが「余剰地」である。典型は富山市場である。市場用地全体を民間に定期借地権を設定、約三分の一を余剰地とした他、公設市場部分も民間が整備、建設し、その施設を行政が借りる方式である。 多く…

国立劇場のサクラ見納め

東京三宅坂の国立劇場三月歌舞伎に行った。 2023年9月、国立劇場は建て替えのため閉場される。歌舞伎、文楽、落語・漫才など伝統芸能は、多く国立劇場で鑑賞してきた。 コロナになって休演が続き、再開しても入りは極端に悪くなっていた。三階席はいつもガラ…

買参新規参入ルール・奨励金改革が焦点に‐新規参入実態調査と参入障壁対応

全国的に整備が進んでいる(3月15日に開業した姫路市中央卸売市場) (農林リサーチ23年4月号より) 各地の市場再整備が進んでいる。令和4年度は1月に入り、冨山、姫路、京都で相次ぎ新施設が完成・開業しているほか、金沢、奈良、大阪、東京など、各地…

豊洲に次ぐ閉鎖型市場完成‐3月13日開業姫路市中央卸売市場開業

完成した姫路市中央卸売市場(2月19日) 姫路市中央市場の移転開場記念セレモシーを取材した。開業後の様子も取材するが、とりあえず2月19日に行われた開場記念式典の模様を紹介する。 (農林リサーチ23年3月号より) 2月19日式典、3月13日開場 令和5年3…

開設と運営の分離すすむ〜公設民営市場時代の到来

新しい市場カテゴリー「民有公営市場」となる富山公設地方市場 (農林リサーチ23年2月号より) 改正市場法による大きな変化として、公設市場から民営市場への転換、廃止など、様々なケースを検証してきた。実践的にも中央市場と地方市場、公設市場と民設市…

写真で見る2月の旅

業界紙に勤めていた頃は、2月、3月は年度末で業界が忙しかった。 近頃は落ち着いていたが、どういうわけか、今年はやたら忙しい。この歳になって忙しいことは結構なことだと言われるが、身体に堪えるものである。 本業のはずのフリーライターもサボりがちで…

金沢中央市場の戦略

金沢市中央市場運営協会は、市場業界向けの情報提供を目的とする意見交換の場として「市場人 EXTRA」を定期的に発行している。以下は同23号(2023年1月15日発行)に掲載されたインタビュー記事である。協会の了解を得て掲載する。 Q. 2020(令和2)年の改…

コロナ禍で取引拡大‐豊明花き「電子取引イロドリ*ミドリ」

名鉄名古屋本線「豊明」駅前にある豊明花き地方市場 (全青協22年11月より転載) コロナ禍において卸売市場の取扱高は全体として健闘しているが、中でも花き市場のITを活用した活性化は際立った効果を上げている。花き業界は全体に業績は良いが、もちろん…

セントライ青果1千億円卸に‐名古屋北部から本場、浜松へとネットワーク拡大

名古屋市央卸売市場北部市場(名古屋北部市場)の卸「セントライ青果」は、2022年4月1日に売上123億円の浜松中央市場卸「浜中」の経営権を取得した。 浜中買収は中小企業再生支援機構からの要請により、累積損失が多い本体を市場部門と切り離し、市…

「地産地消・土産土法・身体不二」を思う

地元食材、地元企業中心のショッピングセンターが増えている(長崎漁港がんばランド) 明けましておめでとうございます。 年初の暇つぶしに魯山人に師事した平野雅章の『日本食文化考』をパラパラ見ていると「土産土法」(どさんどほう)という聞き慣れない…

函館と四万十の秋を訪ねて

10月から11月にかけて福岡、名古屋、函館、四万十に行った。そのお歳でよく動けますねと他人(ひと)からよく言われ「いつ見ても さてお若いと口々に 褒めそやさるる 年ぞくやしき」の川柳の境地を味わっている。 コロナが怖くないのかとも言われるが怖いに…

「いちご よこすかポートマーケット」に行った

船主丼(ふなおさどん)の名前にふさわしい美味しさである 2022年10月28日にオープンした「いちご よこすかポートマーケット」に行った。 松戸市公設地方卸売市場南部市場を運営する「いちごマルシェ(株)」をグループ企業とする「いちごホールディングス」…

卸売会社の生きる道‐八戸中央青果のチャレンジ

八戸中央市場前の道路を挟んで「八食センター」がある 横町芳隆 社長 (農林リサーチ22年10月号より転載) 改正卸売市場法時代に入り卸売市場・卸売業者はどのように変化しつつあるか。 八戸市中央卸売市場は青果部のみの中央卸売市場として半世紀近い歴…

買物客が参加する地域FM‐市場内にある奄美FM放送

住宅街の一画「末廣市場」の中にある「奄美FM」の様子 おそらく全国でもないだろう。2022年10月、鹿児島県奄美大島の珍しいFM放送局「奄美FM」に行った。 奄美大島の中心街、名瀬にある末廣市場の中の店を改装したFM放送局である。隣は海産物を売る…

「ウンギャル丼定食」を食べた‐奄美漁協を訪ねて

ウンギャル丼定食 生の海藻でないと天ぷらはダメらしい 旅行支援によってようやく観光地など人出が増えている。 このところ、各地を取材する機会に恵まれ、奄美大島や、函館、博多、松本に行った。 仕事なのだが、どういうわけか観光地が多い。 取材したこと…

公設地方市場の減少と再編‐公設と民設の接近、卸売市場カテゴリーの変化

(全水卸22年09月号より転載) 公設地方市場の民営化が相次いでいる。また、公設卸売市場を廃止するという今まで少なかったケースも目立つようになった。 中央市場と地方市場、公設市場と民設市場の垣根がなくなりつつある改正市場法時代において、公設…

函館の思い出‐朝市と温泉と美味しいコーヒー

イカも少なく客も少ない函館朝市。旅行割りで今は増えていることだろう 松本のことは前に書いたが、九州人の私にとって北海道は憧れの地であり、とりわけ函館は好きである。長崎育ちなので函館は港や路面電車、函館山からの眺望など共通点が多く親近感があり…

神々の12支‐八戸に行った

自粛が続いているが、個人的には残された時間のカウントダウンが始まっている。なるべく動く体力があるうちは動こうと思っている。 八戸に行った。取材なのだが、それはまた後ほど紹介する。 八戸駅にある12支の山車 常日頃、「全国の中央市場はほとんど行…

改正市場法と地方市場‐公設地方市場の減少と再編

(農林リサーチ2022年8月号より転載) 1.地方市場の減少 市 場 数 の 変 化 R4年1月 R2年6月 H 24年(2012) 中央市場数 65 64 64 地方市場合計 907 1014 1169 (うち公設市場) 143 147 153 (うち準公設市場) 31 31 31 (うち民設市場) 733 836 985 (農…

進化する「公設民営型」卸売市場(下)‐公共性と効率性の共存

(全水卸7月号掲載記事を上下に分けて転載する) 以下(上)の続き Ⅱ. 指定管理者によるPPP・民営化の取り組み〜大阪府中央市場・栃木県南地方市場 こうした経緯によって、「公設公営市場」にPFI、指定管理者、定借権等による民営機能の導入を図る取…

進化する「公設民営型」卸売市場(上)‐公共性と効率性の共存

(全水卸7月号掲載記事を上下に分けて転載する) 改正市場法時代となって2年、卸売市場流通はPFIの推進による効率性優先から「効率性と公共性の共存」が卸売市場の維持・活性化(SDGs)の必須要件となりつつある。3年に及ぶコロナ禍によって、①気…

梅雨明け初日の松本

6月下旬、長野県松本市に行った。梅雨明け宣言が出た日であったことは後で知ったが、とにかく暑かった。 行きは新宿から「あずさ」に乗った。東京から松本に行くには新幹線で長野経由の路線と新宿から特急あずさで行く二通りある。 時間だけなら新幹線が若干…

コロナで高まる市場流通の存在価値−効率性と公共性の共存

(農林リサーチ2022年6月号より転載)当誌5月号で「公設市場の民営化」をテーマに、「行政が完全に撤退する民営化」と「行政が一定関与する民営化」について検証した。コロナ禍で過ぎた3年の間、多くの変化が起きた。その変化を通した市場流通の新たな課…

市場風景スケッチ 木更津魚市場の昼食〜KUttAで食った

千葉県木更津公設地方卸売市場の場内にある食堂「KUttA」で昼食を摂った。 木更津市場の水産部卸「木更津魚市場」は、場内施設を独自に活用、食堂「KUttA」と鮮魚販売店「うお屋」をオープン、地域に開放している。 「市場と食堂」と言えば、これまで卸売市…

水やり禁止の生花「プリザーブドフラワー」

プリザーブドフラワー(保存花)である。知り合いから分けて頂いた。 昔、業界紙のカメラマンI氏に「写真が苦手なら、とにかくたくさん撮ること」とアドバイスされた。今も多く撮るが所詮、写真はセンスであると痛感している。 しかしスマホが良くなって写真…

函館は春盛り

しばらくブログもお休みしていて久しぶりである。先週、5月23〜24日に函館に行った。 水産市場、青果市場を見せてもらい楽しかった。昔、思い出せないほどの昔に行ったことがある。 函館には湯の川温泉という有名な温泉街があるが、路面電車に乗って地元の人…

共同利用で小口配送展開‐新たな食品SCM「豊海流通センター」竣工

改正卸売市場法の下で、アフターコロナの食品流通におけるITを活用した非接触・非対面販売は定着するだろう。 その時に、「来てもらう取引」から「届ける取引」の場として、卸売市場がどのように変わるか、その一つの方向を示すケースとして、2022年3月1日…

なぜ卸売市場には公設と民営の二つがあるのか‐卸売市場雑学雑談その2

一心太助は小売買参人 元々「市場」(いちば)は、民・民の取引の場ですから、全てが民営市場でした。しかし、古くから「座」や「株」によって一定の制約があり、誰でも自由に商売ができたわけではありません。行政の許可も必要でした。 例えば江戸時代の日…

「卸売市場」をどう読むか‐卸売市場雑学雑談その1

「卸売市場」をどう読むか 卸売市場は「おろしうりいちば」と読むのか、「おろしうりしじょう」と読むのでしょうか? 株式市場を「かぶしきいちば」と読む人はいないでしょうが、証券取引所の取引用語には卸売市場と共通する用語がたくさんあることはご存知…