卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

豊洲に次ぐ閉鎖型市場完成‐3月13日開業姫路市中央卸売市場開業

完成した姫路市中央卸売市場(2月19日)

姫路市中央市場の移転開場記念セレモシーを取材した。開業後の様子も取材するが、とりあえず2月19日に行われた開場記念式典の模様を紹介する。

(農林リサーチ23年3月号より)

2月19日式典、3月13日開場

令和5年3月13日に開場する姫路市中央卸売市場の新市場開場記念式典が2月19日午前10時、白浜地区に完成した新市場青果卸売場で開かれた。
建設に約120億円をかけた大事業だけに、折からの雨の中、会場には衆参議員、兵庫県議会、姫路市議会から数十名が参加したほか、市場関係者を含め200名が参加した。

式典では、初めに開設者を代表して清元秀泰・姫路市長が挨拶した。
「昭和32年に開設した手柄地区の中央市場が老朽化と時代のニーズに対応する機能整備のために移転することになり、7年の歳月をかけて論議、途中、土壌汚染の問題も解決し、ようやくここ白浜の地に移転することができた。」と関係者への感謝と今後の食の拠点として発展する期待を述べた。
その後、来賓祝辞として松本 剛明・衆院議員、斎藤元彦・兵庫県知事、宮本吉秀・姫路市議会議長、出倉功一・近畿農政局長の4氏が祝辞を述べた。

祝辞に応える形で市場業界を代表し挨拶に立った木谷憲一市場運営協会会長は、関係各業界の協力に感謝の意を表し「現在地か移転かの論議を経て平成27年に白浜地区への移転を決定、同時に土壌汚染問題も起き、さまざまな試練を乗り越え、ようやく完成の日を迎えた。
この日は新たなスタートでありゴールではない。播磨地域の流通の拠点であり、また食文化の拠点として貢献していく」と述べた。
式典は10時から11時まで行われ、その後、市場施設の内覧を行った。

7年かけた再整備事業

中央市場では京都、和歌山が現在地再整備に取り組んでいるほか、広島、奈良、高松、金沢と、続々と再整備が具体化されている。

いずれも大規模市場だけに再整備の具体化には時間がかかる。姫路中央市場も記念式典で市長や来賓議員、市場運営協議会会長など、揃って開場までの長い取り組みを強調していた。
再整備の検討を始めてから10年、白浜地区への移転を決定してから7年、白浜移転を決定したその年に土壌汚染問題が浮上したこともあり、令和になって新市場の実施設計が確定、2年の工事期間を経て完成した。

新市場の概要

新市場の概要は以下の通りである。

 姫路市中央卸売市場   姫路市白浜町甲1920番地54

市場用地

69,419㎡ 

卸売場棟

21,777㎡

管理棟

2,901㎡(1階は関連売場)

場外施設

賑わい9448㎡、冷蔵庫5272㎡、水産関連4429㎡

事業費

111億4百万円(交付金27億4千7百万円)

市場業者

青果(卸1、仲卸20)

水産(卸2、仲卸13)  関連20

青果、水産ともに閉鎖型

新市場の施設面での最大の特徴は青果、水産ともに閉鎖型施設であることだ。旧市場が5万8千㎡であるから用地は広く、さらに賑いエリアなど場外施設としており、実質は8万㎡近くなる。
しかし施設は約2万5千㎡とコンパクトになっており、駐車場や動線は機能的である。

また、卸売場の天井が青果5〜5.5メートル、水産3.5メートルとなっていて、従来の卸売場の天井の高さと比較するとかなり低い。
ウイング車が直接卸売場に入るわけではないし、なぜあれほど高くする必要があるのかという疑問があったのだが、電気代の高騰という予期しない状況になった今、温度管理に効率的な天井の低さは、コスト面で大きなプラスになるのではないだろうか。

仲卸、関連は約30社移転せず

新市場業者数

3(青果1、水産2)

青果仲卸

20(−3)

水産仲卸

13(−15)

関連

20(−10)

2月初めの時点で新市場に移転開業する市場業者は56社である。
市場の歴史が長いこともあって約90社ある市場業者には零細業者も多く、移転を契機に廃業する業者が多く、約30社が移転せず廃業となった。

移転が決まり市場業者の意向調査を行った段階では92社中60社が移転する意向を示していたが、施設が完成した今年2月段階では市場業者は4社減り56社となった。
そのうち28社が移転しないことを決め、今後、3月の開場時にはさらに数社、移転しない業者が出ると見られている。

このうち青果は大手が多く、3社が統合し1社となったケースもあり、ほとんど減っていないが、水産は半数以上が入場しない。
移転地は妻鹿漁港のそばであり、人気のある直売所「とれとれ市場」がある。
賑いエリアも大幅に拡大するなど仲卸にとっては有利な条件が広がるのだが、高齢化やコスト負担など経営維持が困難な業者がこれを機会にという判断になったと思われる。こうした傾向は今再整備に取り組んでいる市場の多くで起きている。

使用料は「激変緩和」導入

移転しない業者が増えた大きな要因が使用料負担である。
現在の使用料と新市場の使用料を比較した。

1㎡あたり使用料

現行使用料

新市場使用料(11年目より)

1〜3年目

4〜6年目

7〜10年目

卸売場

501

1510

70%

80%

90%

仲卸青果

2250〜848

1380〜3510

70%

80%

90%

仲卸水産

2250〜848

3290〜4280

70%

80%

90%

関連

1950

3060

70%

80%

90%

駐車場

345

200〜260

70%

80%

90%

高くて3倍となる使用料を10年間、徐々に上げていく「激変緩和」と言われる制度である。
使用料は市場業界にとって大きな問題だけに市もかなり長期にわたって上げ幅を小さくしている。

本来の激変緩和は、市場流通の隆盛期で、市場に入場すれば売上は伸び、取引は委託であり、来る客に売れば手数料は確実に利益となっていた時代の産物である。
3年後、5年後に売上が伸びる保証はないどころか、かえって下がる経営戦略を立てている市場も多く、徐々に上がっていく制度が逆に負担を重くする可能性もあるが、移転時の負担軽減措置としてはやむを得ないということだろうか。