卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場の課題

24年問題と市場流通その2〜運送業界の立場から

大きく被災した能登半島にある七尾。市役所正面には無名塾・仲代達矢氏筆の「市民のねがい」がある。七尾市は和倉温泉に接し与謝野晶子の歌碑もある文化都市である 明けましておめでとうございます 年末も新年も変わらずめでたいと思っていましたら、能登半…

市場施設における卸売場・仲卸売場の変化‐「販売する場」と「物流動線」をセット

(「全青協」2023(令和5)年6月号より) 物流の重要性が高まるとともに、市場施設における卸売場、仲卸売場が大きく変化しつつある。 取引面での規制緩和によって、卸と仲卸の機能は重なる部分が増えている。とりわけ、物流部門は搬入から搬出までの施設内…

総務省アドバイザー支援制度の活用‐PFIの変化による再整備と開設のあり方

私は数年前から総務省管掌の公設市場経営マネジメントアドバイザーをやっている。改正市場法制定前は、依頼を受けた自治体に1回行くだけであったが、結局、1回だけでは済まず、何回もやりとりすることになった。 2年前に補助事業となり年間5回まで国の負…

余剰地の活用‐円満な三角関係が築けるか

各地で取り組まれている市場再整備で大きな問題となっているのが「余剰地」である。典型は富山市場である。市場用地全体を民間に定期借地権を設定、約三分の一を余剰地とした他、公設市場部分も民間が整備、建設し、その施設を行政が借りる方式である。 多く…

買参新規参入ルール・奨励金改革が焦点に‐新規参入実態調査と参入障壁対応

全国的に整備が進んでいる(3月15日に開業した姫路市中央卸売市場) (農林リサーチ23年4月号より) 各地の市場再整備が進んでいる。令和4年度は1月に入り、冨山、姫路、京都で相次ぎ新施設が完成・開業しているほか、金沢、奈良、大阪、東京など、各地…

開設と運営の分離すすむ〜公設民営市場時代の到来

新しい市場カテゴリー「民有公営市場」となる富山公設地方市場 (農林リサーチ23年2月号より) 改正市場法による大きな変化として、公設市場から民営市場への転換、廃止など、様々なケースを検証してきた。実践的にも中央市場と地方市場、公設市場と民設市…

金沢中央市場の戦略

金沢市中央市場運営協会は、市場業界向けの情報提供を目的とする意見交換の場として「市場人 EXTRA」を定期的に発行している。以下は同23号(2023年1月15日発行)に掲載されたインタビュー記事である。協会の了解を得て掲載する。 Q. 2020(令和2)年の改…

卸売会社の生きる道‐八戸中央青果のチャレンジ

八戸中央市場前の道路を挟んで「八食センター」がある 横町芳隆 社長 (農林リサーチ22年10月号より転載) 改正卸売市場法時代に入り卸売市場・卸売業者はどのように変化しつつあるか。 八戸市中央卸売市場は青果部のみの中央卸売市場として半世紀近い歴…

公設地方市場の減少と再編‐公設と民設の接近、卸売市場カテゴリーの変化

(全水卸22年09月号より転載) 公設地方市場の民営化が相次いでいる。また、公設卸売市場を廃止するという今まで少なかったケースも目立つようになった。 中央市場と地方市場、公設市場と民設市場の垣根がなくなりつつある改正市場法時代において、公設…

改正市場法と地方市場‐公設地方市場の減少と再編

(農林リサーチ2022年8月号より転載) 1.地方市場の減少 市 場 数 の 変 化 R4年1月 R2年6月 H 24年(2012) 中央市場数 65 64 64 地方市場合計 907 1014 1169 (うち公設市場) 143 147 153 (うち準公設市場) 31 31 31 (うち民設市場) 733 836 985 (農…

進化する「公設民営型」卸売市場(下)‐公共性と効率性の共存

(全水卸7月号掲載記事を上下に分けて転載する) 以下(上)の続き Ⅱ. 指定管理者によるPPP・民営化の取り組み〜大阪府中央市場・栃木県南地方市場 こうした経緯によって、「公設公営市場」にPFI、指定管理者、定借権等による民営機能の導入を図る取…

進化する「公設民営型」卸売市場(上)‐公共性と効率性の共存

(全水卸7月号掲載記事を上下に分けて転載する) 改正市場法時代となって2年、卸売市場流通はPFIの推進による効率性優先から「効率性と公共性の共存」が卸売市場の維持・活性化(SDGs)の必須要件となりつつある。3年に及ぶコロナ禍によって、①気…

コロナで高まる市場流通の存在価値−効率性と公共性の共存

(農林リサーチ2022年6月号より転載)当誌5月号で「公設市場の民営化」をテーマに、「行政が完全に撤退する民営化」と「行政が一定関与する民営化」について検証した。コロナ禍で過ぎた3年の間、多くの変化が起きた。その変化を通した市場流通の新たな課…

共同利用で小口配送展開‐新たな食品SCM「豊海流通センター」竣工

改正卸売市場法の下で、アフターコロナの食品流通におけるITを活用した非接触・非対面販売は定着するだろう。 その時に、「来てもらう取引」から「届ける取引」の場として、卸売市場がどのように変わるか、その一つの方向を示すケースとして、2022年3月1日…

なぜ卸売市場には公設と民営の二つがあるのか‐卸売市場雑学雑談その2

一心太助は小売買参人 元々「市場」(いちば)は、民・民の取引の場ですから、全てが民営市場でした。しかし、古くから「座」や「株」によって一定の制約があり、誰でも自由に商売ができたわけではありません。行政の許可も必要でした。 例えば江戸時代の日…

「卸売市場」をどう読むか‐卸売市場雑学雑談その1

「卸売市場」をどう読むか 卸売市場は「おろしうりいちば」と読むのか、「おろしうりしじょう」と読むのでしょうか? 株式市場を「かぶしきいちば」と読む人はいないでしょうが、証券取引所の取引用語には卸売市場と共通する用語がたくさんあることはご存知…

コロナ禍と市場

暦には数百の「…の日」があるらしいが、2022年2月22日は「スーパー猫の日」だという。なるほど、初めて知った。 テレビも一日中、猫特集をやっていて人気である。YouTubeでペットの動画をよく見るが、「アース製薬」が「ニャース製薬」の名前で宣伝す…

地方市場のあり方とR&C戦略‐堀雄一氏の話を聞いて

初冬の富士は美しい(湘南深沢) 2021年11月26日、オンラインで開かれた藤島廣二氏が主宰する「市場流通ビジョンを考える会」を聞いた。「ポスト・コロナの卸売市場を考える」を統一テーマに小暮宣文氏の講演と磯村信夫氏、堀雄一氏、松尾昌彦氏による鼎談で…

賑わい機能と市場‐対面販売の課題

移転前の築地市場関連棟の飲食店街消費者は市場のどこに魅力を感じているのだろうか 市場流通における対面販売機能は、主に仲卸と関連が担っている。旧卸売市場法は売買参加者制度と仲卸制度を導入することによって、集荷は卸、評価と分荷は仲卸とする役割分…

卸はなぜ配送機能を重視してこなかったのか

市場業界にとって、物流の「24年問題」が新たな重要課題となっている。 これまで物流問題は取り組みが強調されてはいても「やるべき」論にとどまる部分が大きかった。しかし働き方改革関連法に基づき、24年度からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が…

非接触、非対面型物流と水産市場‐eコマースの取り組みはなぜ遅れたか

卸売市場はeコマースや物流への対応が遅れているとの指摘は昔からあったが、これは必ずしも市場業者の責任によるものではない。市場流通において「市場に来る人に売る」商物一致の取引原則が全面的に改められたのは2020年の改正卸売市場法施行からである…

コロナ禍 明暗くっきり 青果と水産‐青果は半数が売上増、水産売上増は2市場のみ

農水省はこのほど、8月末時点における新型コロナウイルスの卸売市場に対する影響とその対応策についてまとめた。 1.取扱高の状況 コロナ禍における卸売市場の令和3年1-6月は、青果が24市場、約半数の市場がコロナ前より取扱高を増やしたのに対し、水産は34…

公設民営化から民設公営化の動き‐公設と民営の接近

(農林リサーチ2021年9月号より一部転載) 改正卸売市場法の下で特徴的な動きがもう一点、公設市場におけるPFI(民間活力導入)による公設と民営の接近である。 改正卸売市場法以前にも、公設市場の民営化は進められていた。その「公設市場の民営化」と…

R&C売上1400億円卸に‐首都圏青果市場の激変加速②

人口15万人の上田市を拠点にした1400億円卸が誕生する 神明とともに、首都圏市場流通の新風となるのがR&Cホールディングスである。 R&Cホールディングスは、長野県連合青果と長印によって2015年10月に設立され、堀雄一連合青果会長が社長に就任した…

東京青果の神田青果グループ化の意義‐首都圏青果市場の激変加速①

狭隘化解消が大きな課題となっている大田市場卸売場 令和2年度売上2200億円と圧倒的なシェアを持つ東京青果は6月21日、東京神田青果をグループ化すると次のように発表した。 「2021年6月 18 日付で、東京青果株式会社(代表取締役社長:川田一光)は東…

市場再編の動き加速

2018 改正卸売市場法制定後の市場の動き 2021(R3) 0628 東京青果が東京神田青果グループ化 秋にも 2021(R3 )0428 連合青果がぐんま県央青果全株取得 0601 日付 社名そのまま 2021(R3) 0621 宮果と仙台中央青果卸売(仙印)10 月 1 日合併 仙台あおば…

富山市がPPP支援を国に要請

富山市はこのほど富山市公設地方卸売市場の再整備について、自民党下村政調会長に対し国の財政支援を求める要請を行なった。 富山市は大和ハウスなど8社の事業連合と、33年間のリースによるPPP方式による契約を2021年4月30日に正式調印している。 しかし、3…

富山市場方式はなぜ国の補助対象にならないか

富山市場方式とは、富山市公設地方卸売市場の再整備に当たって、富山市が出した「市場敷地全体に事業用借地権を設定し、事業者が市場施設と民間収益施設を一体的に整備した上で引き続き所有し、市場施設を市が賃借し運営を行う」方式である。(以下、事業の…

公設市場再編が焦点

改正市場法による卸売市場の認定数は中央市場が40都市、65市場であり、地方市場は911市場(公設143、第3セクター31、民設737)となっている。これに対し許認可制時代の令和元年度市場データ集の市場数(平成30年度)は、中央市場が40都市、64市場で、地方市…

物流と情報の重要性

春を待つ 前橋市内 馬場川通り 新たな物流政策大綱と食品流通合理化検討会 物流と情報が国の重点政策として取り組まれている。食品流通については農水省だけでなく経産省、国交省の三省共同による「食品流通合理化検討会の中間取りまとめ」が2020年4月に出さ…