卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

24年問題と市場流通その2〜運送業界の立場から

大きく被災した能登半島にある七尾。市役所正面には無名塾・仲代達矢氏筆の「市民のねがい」がある。七尾市は和倉温泉に接し与謝野晶子の歌碑もある文化都市である

明けましておめでとうございます

年末も新年も変わらずめでたいと思っていましたら、能登半島地震、羽田空港着陸事故と相次ぎ、大変な年の幕開けとなりました。
私は昨年度、能登半島の七尾に5回行き、金沢や富山にも行きました。
七尾線も甚大な被害を受け、七尾―和倉温泉間は復旧の目処が立っていないようです。
熊本を上回る被災となったようで心配です。1日も早い復興を祈念します。

いよいよ「物流の24年問題」がスタートしました。
       
昨年6月に国の物流政策パッケージが発表されましたが、卸売市場業界の危機意識はそれほどありません。
この危機意識の薄さは、物流の主要な担い手が運送業者であることによるものです。
24年問題は、直接的にはドライバー不足の解消が目的ですが、これまでトラック輸送によって全国どこでも同じ生鮮食料品を同じ価格で提供してきた市場流通の根幹を危うくすることになる大きな問題です。
物流の一極集中が変わらざるを得なくなり、地方市場の存在意義・役割もまた変わってくるだろうと思います。

24年問題の幕開けにあたって運送業界はどう対応していくのでしょうか。

豊洲市場を中心に全国の水産物流通を担う「東京都中央卸売市場輸送協力会」(略称:輸送協力会・会員運送会社127社)の椎名幸子会長(中央運送社長)と、水産、青果、花き、生鮮三品を扱う永井(株)の永井洋司社長に聞きました。

1.時代の変化に対応する生鮮流通のパイオニア〜輸送協力会・椎名幸子会長(中央運送社長)に聞く

― 24年問題が浮上し、今、改めて市場の物流合理化が課題となっています。そこでまず、輸送協力会の会長でもある椎名社長に、移転して5年経った豊洲市場について、運送業者として物流面での評価を伺います。

椎名=私たち東京都中央卸売市場輸送協力会の会員企業は127社です。その主な業務は産地から豊洲市場への輸送と豊洲市場から小売商、量販店への配送、及び地方市場への転送です。

豊洲市場については、当初から懸念されていたことですが、315号線、環状2号線によって3街区に分断され、商流を中心とした重高層施設となったことで物流面では非効率な面が今も課題として残っています。

築地時代を含め豊洲市場は、全国的な拠点市場です。
卸、仲卸の皆様方が築いてこられた市場ですが、豊洲市場では売るだけでなく、全国への転配送が拠点市場としての機能の一つになっています。

私たち輸送業者は、産地から豊洲市場への輸送だけでなく、豊洲市場を通して全国に輸送することで豊洲市場の拠点市場としての機能を担っているという自負があります。

24年問題への運送業界の考え方

― そうした機能を担い続けてきた運送業者は、24年問題に直面することで今まで通りの役割を担い続けることができるのでしょうか?

椎名=輸送協力会は、ピーク時には140社くらいありましたが現在は127社と減っています。ドライバー不足も深刻ですし、今のままなら32.5%の荷が輸送できなくなるという国のデータもあります。今後、さらに厳しくなると思います。

しかし、市場は常に時代とともに変わって来ました。その中で私たち輸送業者はニーズの変化に適応してきた歴史があります。
鉄道が物流の中心であった時代には、築地市場への荷の入口は一番奥の鉄道プラットフォームで、出口が正門でした。

そうした時代からトラック輸送に変わるという市場の歴史でもかつてない時代を迎え、多くの荷主の皆様方の協力を得てニーズに対応した物流を構築し、産地から市場、市場から地方市場及び全国の消費者への輸送を担い続けてきました。90年近い歴史の中で養われたノウハウもあります。

ドライバー不足等の業界を取り巻く環境は益々厳しくなり、コロナ禍で浮上した食料自給率の課題や国内生産の拡充など、生鮮食料品の安定供給を担う卸売市場の公共性・社会的環境の要求も益々強くなっています。
荷主の皆様方の協力を得ながらニーズに対応していくことで、私たち輸送業者もまた社会に必要とされる役割を果たし続けることができると確信しています。

― 昨年出された国の物流政策パッケージについて、運送業者としてどのように受け止めておられますか。

椎名=政策パッケージに出された取引慣行の見直しや物流の効率化は、運送業者にとって必要な政策が並んでいますが、運送業者がやれることは限られています。

水産市場は発荷主と着荷主の皆様方との調整が難しいのです。全国には多くの漁協があり、各漁協から運送業者が集荷し、混載によって豊洲市場だけでなく他市場にも輸送しています。

物流政策パッケージにあるトラックバース予約システムやストックヤードなど運送業者にとっては非常に役立つシステムだと思いますが、そのコスト及びストックヤードの場所確保などが大きな問題となります。

― 今、各地市場で検討されている課題としてパレット、いわゆるパレチゼーションの問題があります。

椎名=豊洲市場でも農水省の水産物流通標準化検討会が開かれています。私も参加させていただいていますが、難しい課題が多いと思います。

パレット統一は効率化に有効

― どういう点が難しいのでしょうか。

椎名=11型パレットに統一するのは非常に効果的だと思います。産地からは、ほぼパレットで出荷されますので効率化にも役立ちます。

問題は回収です。
市場流通において、運送業者が使うパレットは雑パレット(所有権のないパレット)が多く、不特定多数から不特定多数への流通です。そうした中で使われたパレットは所有者自体が不明ですから回収は初めから考えられていないのです。

パレット流通そのものは有効なのですが、使われたパレットを確実に所有者の下に回収することは困難です。回収するシステムは可能でしょうが、問題は二つあって、一つは同じパレットが回収されるとは限らないことです。誰もが古いパレットよりも新しいパレットを使いたいので、新しいパレットは確保され古いパレットから流通されます。それが豊洲市場に集まりパレット廃棄のコストは年間約6,000万円にものぼります。

第二はパレットの回収が難しいことです。九州に1枚、北海道に1枚あると分かっても回収するコストと見合いません。レンタルの場合は紛失責任も生じます。
豊洲市場開場時に用意した100枚の11型パレットは1週間で全部無くなりました。どこかで使われているのですが実際には回収できません。
工場やセンター間など特定のクローズドされた場合は有効でしょうが、市場については難しいのではないでしょうか。

パレット回収は等枚交換が現実的

― 解決策は無いのでしょうか。

椎名=パレットは、レンタルでも自社保有でもコストはかかりますし回収も難しい。しかし、不必要に溜め込んでも利益は生みませんし、場所もとるし管理も大変です。
パレットが潤沢に回るようになれば等枚交換が一番現実的ではないでしょうか。
国や自治体が11型プラスチックパレットへの変更に思い切った支援策をとれば時間はかかってもパレチゼーションは可能だと思います。

― 物流政策パッケージでは、他に何かありますか。

椎名=気になるのが罰則規定です。罰則規定の対象が、ドライバーと運送業者だけになっています。
24年以降、今まで通りの時間に出発し、指定された時間に届けることが難しくなる地域が増えるでしょう。出発時間を早めることは運送業者の都合では出来ませんし、今のままですと運送業者とドライバーが違法承知でやるしかないのです。

罰則規定を設けても運送業者だけでは解決しません。規制通りの輸送を行うためには、発荷主・着荷主の理解と協力を得て業界全体で取り組むことが不可欠になってきます。
無人化、自動運転も期待していますが、すぐには難しいと思います。

運送業者としては高速道路での無人車の試験実施を急いでもらえないかと期待しています。制限速度の緩和も検討されていますが、事故の危険性も危惧されます。高速道路の無人化だけでも実現すれば労働環境の改善に大きく役立ちます。

一 最後に今後の展望について一言お願いします。

椎名=初めに申しましたが、輸送協力会127社の運送業者は、すでにさまざまな形で情報交換を行い、地域ごとの協力会社など運送業者間のネットワークも確立されています。
変化に対応し細かいニーズに応じた業務を行うフットワークの軽さが、強みであり優位性であると思っています。
これまでのノウハウを活かし、今後も変化とニーズに対応し、社会に必要とされる運送業者であり続けたいと思っております。

2.水産、青果、花き、を扱う輸送ネットワーク企業〜永井・永井洋司社長に聞く

― 永井は伊豆諸島の離島輸送をはじめ、水産、青果、花き、の生鮮三品を扱っておられます。24年問題に対してどのように受け止めておられますか。

永井=当社は魚と野菜、花を扱っていますし、航空、離島の事業も行っていますので24年問題には重大な関心を持っています。

今までは労働時間は長いけれど稼ぐことはできる。稼ぐという魅力がドライバー確保の大きな要因でした。働き方改革でそうしたことができなくなり、労働時間は減ったが仕事の大変さは変わらず、収入は減る。結果的には無理にドライバーをやるだけの魅力がなくなったのです。ただでさえドライバー不足が進んでいるのに、皮肉なことに物流改革が人手不足に拍車をかけることになったのです。

しかし、もちろん、このままでいけばもっと大変になることはデータでも出されています。

物流政策パッケージはどこまで実現可能か

― 解決策として国は物流政策パッケージを出しました。

永井=物流政策パッケージの方針は、人手不足と高齢化が進むドライバーの確保のために必要だと思います。
商慣行の見直しや意識改革は、すぐに達成することは難しいでしょうし、物流の効率化の面でやれることから取り組んでいく以外にないと思っています。

クリアしなければならない政策パッケージの課題は分かっていますが、問題はどのように対応するかです。
例えば、東北の青森、山形、秋田等は豊洲市場から600キロ以上あります。今まで翌日便が可能であったのは、ドライバーの無理な働き方に頼っていたことが実態です。

24年以降は、真夜中に長時間、高速を突っ走ってくることはできませんので、翌日便は難しくなります。翌日の昼間に運転し、翌々日の便にせざるを得ません。
発荷主さんと着荷主さんの話し合いがどうなるか、輸送業者としては罰則規定までありますから、今までのようにドライバーに無理を言って働いてもらうことが出来なくなります。そうした状況を理解した上で荷主さんと対応策を検討していくことになります。

また、お互いに共通の認識に立てたとしても、次に自動運送やパレット、ストックヤード、保冷庫などの課題は、全てコストの問題が関わってきます。

問題はコスト負担

― 確かに問題はコスト負担です。

花き市場は各地の中継地点にストックヤードの整備が進められていますが、問題はこうした施設のコストをどこが負担するかです。

運送業者が施設をつくったとしても、その経費を運送料金に乗せることができれば良いのですが、今でも荷主さんから高いので安くならないかと言われます。
ドライバー確保のために人を使って荷下ろしをやればその分のコストはかかりますし、昼間の輸送にすると保冷庫も必要になります。

24年以降、今まで通りだと生鮮食品は3割が輸送できなくなるというデータが出されていますが、人材面だけでなくコスト面でも今までの2倍のコストがかかることになりますので運送業者の経営努力ではどうしても限界があります。

生鮮は送り先と数量が決まるのが30分前ということも珍しくはありません。予定が組めませんし途中で輸送先が変更になることもあります。
生鮮という商品の特性上、マニュアル化したロジスティクス管理はできません。それが我々、中小の運送業者が生きていくことができる要因でもあるのですが、それでも24年問題の解決は輸送会社の経営努力だけでは難しい。物流問題ではなく24年問題と言われる理由でもあるのだと思います。

50社の協力会社と連携したネットワーク

― 永井はどのような取り組みを行なっているのでしょうか。

永井= 自社トラックは15台ありますが業務の多くは約50社ある協力会社に委託しています。市場の業務ができる運送会社は少ないのです。

水産と青果の混載は臭いの問題があって地元の運送会社も敬遠しますし、花きはエチレンガスの問題があって混載は難しい。水産、青果、花きの輸送を行うためには、どうしても各業種別の協力会社とのネットワークが必要です。

ただ、協力会社もそれぞれ高齢化が進んでいて廃業する会社も出てきていますので、新しい協力会社を増やし、自社トラックも増やすこと等も考えざるを得ません。

物流効率化の取り組み

― 政策パッケージではパレット化の課題が重視され、拠点市場で国も参加した検討会が行われています。物流の効率化の課題は、どこまで取り組みが進んでいるのでしょうか。

花業界は市場のトラックバース予約システムや11型パレットの導入が進んでいます。
当社も、お台場のストックヤードで導入しました。

伊豆七島からはコンテナ輸送でしたが豊洲での荷下ろしに40〜50分かかっていました。これを神津島に一旦集めてパレットに乗せて運ぶようにしました。最初は面倒だという意見もありましたが、実施しましたら今は5分で下ろせるようになっています。

11型パレットに統合することは輸送業務の大きな効率化になると思います。ただ問題は回収が難しく紛失します。一枚5千円はするものですからこのコストは大きいです。A地点からB地点への移動だけであれば良いのですが、不特定多数に輸送する場合の回収が確実にならなければ普及は難しいと思います。レンタルも結局コストがかかるのは同じです。バーコードなどでパレットの行き先を探ることもできるでしょうが、うちのパレットが北海道にあった、九州にあったと分かっても、回収することは難しいです。

24年問題の全てに共通するのですが、問題はコストです。AIのツールによってパレットの管理システムはできるでしょうが、普及までは時間がかかると思います。

市場の今後の物流について

今後についていえば、トラックバース予約システムやストックヤード、花き市場で導入されているAGV、自動搬送システムもレール無しで無人搬送ができるようになっています。クランプフォークリフトも価格は高いのですが、確かに業務の効率化には役立つものだと思います。

水産流通さんが取り組んでおられRFIDも水や温度のネックがクリアされ、プリント化できることで価格も下がると言われています。機能面の優秀さは実証されていますので、後は価格です。5円以下になるようでしたらぜひ使ってみたいと思います。

今後、どうやってもドライバーが増えることは期待できませんので、今いるドライバーが働きやすい労働環境を整備することが課題だと思います。
新しい物流を構築していくことは運送業者の責任です。新しい物流構築が輸送だけでなく生鮮流通業界全体の生き残りの要件だと思います。

そのためにも、出荷荷主と着荷主の双方の協力が必要です。
市場流通は絶対必要な分野ですし、全国の運送業者が培ってきたノウハウもあり十分な競争力もあります。

当社は、築地市場が開場した昭和10年に創業し、伊豆七島からくる特産品の取り扱いを皮切りに、水産・青果・花き・一般雑貨・航空貨物・冷蔵庫保管・ピッキング・ラベル表示等の業務を拡大してきました。90年に及ぶ業務によるノウハウを発展させ、今後も必要とされる企業であり続けることが24年問題の解決につながると思います。

3.まとめ〜取材を終えて

今回、運送業者の立場から24年問題に対する考え方・取り組みを取材しました。
青果や花き市場に比べて、水産市場における24年問題の対応が今ひとつ進んでいないことは分かっていたのですが、水産市場としての取り組みの難しさが少し理解できたような思いがしました。

施設整備は物流中心にシフト、機能と施設の一体化

市場流通における物流機能の重要性は言うまでもありません。
改正市場法は施設整備助成の要件として物流、温度管理、情報、輸出の4点をあげています。温度管理、情報は物流の補完機能でもあり、施設整備は物流中心であることが明らかです。

姫路市場や京都市場塩干部は、こうしたコンセプトによる施設整備です。
ヒトの流れではなくモノの流れ、物流動線がタテ軸としてあり、そのタテ軸に卸売場や仲卸売場、ピッキング場などがヨコ軸として配置されています。
豊洲市場は改正市場法時代に向かう過渡期の施設であり、物流機能がタテ軸となって機能しておらず、それが物流効率化のネックとなっていると思います。

政策パッケージの何をどう取り組むのか

施設整備では物流中心の考え方が広がりつつありますが、従来の取引原則は「市場卸売場までの輸送は出荷者の責任、卸売場での取引終了後の引渡しは仲卸・買受人の責任」となっています。

物流効率化が市場全体の課題であることに誰も異論はないのですが、物流は取引条件の一つであり業務を実際に担っているのは運送業者なのです。

機能面の物流の重要性と、実際の業務における卸売会社の責任との乖離が、物流政策パッケージの取り組みの難しさの一因でもあるだろうと思います。
市場全体で検討できる物流政策パッケージの課題の一つがパレット化です。

パレット化は関係団体全員がメリット

パレット化による流通合理化は運送業者だけでなく荷主、市場業者にもメリットは大きいと思います。

国が主導し、拠点市場でパレット化の検討会が開かれていますが、流通合理化の突破口として相応しい課題ですが、問題はコスト負担です。

卸売市場は所有権のない雑パレットが多いために、レンタルの普及や木製パレットの償却分を変えるだけでは物流の効率化は限界があるだろうと思います。

国や開設自治体が全額補助すれば解決しますが、それが難しければ、関係業界が協会等の受け皿をつくり負担し合い、そこに国や開設自治体が補助し、パレットの流通量を増やすことも解決策の一つではないでしょうか。

運送業者は3PLの担い手

近年、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)業者が注目されています。
3PL業者とは、運送を含めた物流の包括的な業務を行う業者で、必ずしもトラック等の運送業である必要はありません。
配送、運送、輸送、物流、兵站(ロジスティクス)など、さまざまな名称がある物流ですが、中央運送、永井は、両社ともに早くから3PL業者として機能している企業です。

全国に千以上ある卸売市場の物流を単独で担うことはどんなに規模の大きい運送会社も不可能です。事実、輸送協力会には大手企業も入っていますが、シェアが高まっているということはありません。中小企業が連携しあうことで初めて生鮮食料品の物流は維持されています。
輸送も含めた物流機能の取り組みは、市場全体としての重要な課題です。
24年問題は試行錯誤を繰り返しながら新しいロジスティクスが構築されていくでしょう。
その中で、中央運送や永井、あるいは東発など、すでに3PL業者として機能している輸送ネットワーク企業を、卸売市場として意識的に育てる取り組みも必要ではないでしょうか。

今、取り組まれているパレット化も拠点市場を中心に急速に広がっています。
先行している青果、花き市場で更に広がれば、水産市場にも波及するだろうと思います。
大田市場や豊洲市場、大阪本場など全国の拠点市場で11型パレットが普及すれば、地方市場にも波及することは必然です。

問われているのは運送業者ではなく卸売市場の物流機能ではないでしょうか。