豊洲市場で行われた東京水産振興会主催の講演会「水産資源の現状とこれからの豊洲市場流通について」を聞いた。
講師の和田時夫・漁業情報サービスセンター会長と、婁小波・東京海洋大教授は、お二人ともに水産資源の問題に詳しい研究者である。
豊洲市場の一周年については様々な媒体で取り上げられたが、水産資源との関連で市場流通のあり方を検討する論点は新鮮に感じた。
和田氏は、羅臼で前年の10倍の漁獲量となって話題となっているスルメイカなど浮魚資源とカレイ・ヒラメ等の底魚資源について、主要魚種ごとに資源動向の分析と予測、課題を丁寧に述べた。
漁業生産の季節的・地域的変動・減少は今後も続き、卸売市場供給の困難性は拡大するだろうと述べ、資源管理の重要性とともに出荷調整や集荷、輸送販売のサプライチェーン効率化等の課題を提起した。
婁氏は、水産資源の減少という同じ問題意識に立って、豊洲市場はこれまで「高鮮度高コスト流通」を見直し、海外を含めた新産地の開拓等など「低コスト物流・低未利用魚の活用」など新たな仕組み作りを提起した。
卸売市場法と漁業法の改正下で市場流通はどう変わるか、どう変えていくべきかという視点は重要であり、これまであまり論じられてこなかっただけに重要な問題提起である。
水産振興会は今後こうした機会を増やしていきたいと述べたが、市場業界にとっても資源問題を通した流通のあり方を考える大きな意義を持つのではないかと思った。