卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

経営と営業の分離−栃木県南市場の青果卸に荒井商事−

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公設市場から民営市場に転換した栃木県南地方卸売市場の開設会社「荒井商事株式会社」(荒井亮三社長)は、花き部門に続き青果卸売事業も経営権の譲渡を受け、2019年8月1日から「荒井県南青果(株)」として営業を開始した。

これで荒井商事は、公設市場の民営化に伴い、開設者であると同時に青果部門と花き部門の卸売業者であり、食品を扱う関連事業者でもあるという市場体制となった。

開設会社と複数の卸売部門を持つ卸売市場は、石巻市場やキョクイチ等の民営市場ではいくつかのケースがある。しかし、栃木県南市場の場合は公設市場から民営市場に転換したケースであり、荒井商事は開設者、青果、花きの卸売業について、いずれも主要な事業ではない。荒井商事の主要な事業は年商1千億円規模の中古車オークションと食品卸である。

荒井商事が事業を承継した花き部門は「フロリード」、青果部門は熊谷青果の子会社から承継されたものだが、両部門とも前の卸売会社から職員をそのまま譲り受け、営業は両社とも継続的に協力していくという新たな市場再編のあり方を示した。

青果、水産、花き、米穀、食品、関連の多彩な企業が一堂に会したコンソーシアム、新たな「卸売市場株式会社」ともいうべきユニークな開設会社となった。
荒井商事は多角的な事業を展開しており、受け皿としての市場開設者の立場から従来の卸売会社の経営を引き受けつつ事業展開は業界の協力を受けるという経営と営業の分離という新しい展開は、改正市場法後の方向性を示す一つのあり方と言えるのではないだろうか。