卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

東都水産のTOB成立−麻生グループ筆頭株主に

豊洲市場の一部上場水産卸「東都水産」(江原恒社長・資本金23億76百万円)に対する麻生グループ「ASTSホールディングス」のTOB(公開買付け)が成立し、東都水産普通株式の36.53%を所有する筆頭株主となった。

ASTSホールディングスは2020年11月9日に東都水産と資本業務提携契約を結び、現経営陣の協力の下で11月10日から12月22日まで友好的TOBを行なっていた。

豊洲市場は青果部の卸は「東京シティ青果」1社であるのに対し水産卸は7社あり、長期低迷が続く市場流通のなかで、築地時代から卸7社の再編は避けられない課題と言われていた。

しかし、改正卸売市場法によって取引等の大幅な規制緩和がなされたことに加え、再度の緊急事態宣言が出されるまでに広がったコロナ禍によって国内の食料安保体制の重要性も増し、卸売市場もまた再評価されるようになった。

このため市場卸の再編は、卸間の合併による大型化によって経営健全化を図るだけではなく、様々な業種の市場外企業が市場流通に参入するケースが増えてきた。

改正卸売市場法が制定された2018年から2年間の猶予期間を経て施行された2020年の3年間に限っても、次のような再編が相次いでいる。

【2018年(平成30年)】

  • 生産者団体による卸「札幌ホクレン青果」と「丸果札幌青果」が統合し「札幌みらい中央青果」取扱550億円
  • 横浜丸魚とスーパーロピアが合弁で川崎南部地方市場卸「川崎丸魚」設立
  • 米穀のトップ卸「神明」が成田市場青果の株式70%取得

【2019年(令和元年)】

  • 水産加工卸「(株)一光園」が尼崎公設地方市場の水産部卸として入場

【2020年(令和2年)】

  • 運送業ナオヨシ(株)が上尾青果市場卸「埼玉県中央青果」経営権取得
  • 名古屋北部市場で卸2社統合「セントライ青果」865億円卸に
  • スーパー「駿河屋魚一」が高山公設地方市場の魚菜卸「ひだ高山中央市場」の青果部門のみ事業継承
  • IT企業オークネットが世田谷中央市場花き卸「砧花き園芸市場」買収
  • 5年間の公正取引委員会の規制が解除され、レンゴー青果と長印による「R&Cホールディングス」1300億円卸が本格稼働
  • 豊洲市場水産部の1部上場卸「東都水産」の株式を麻生グループ「ASTSホールディングス」が友好的公開買付け、36.5%取得し筆頭株主に
  • 東果大阪、岡山大同青果、成田市場青果の三社をグループ展開している神明が東京シティ青果の親会社「東京中央青果」の株式30%を取得、グループ青果卸4社の合計取扱高1300億円の全国3位の大型青果グループに

令和3年もまた、コロナ禍の下で続く社会構造の激変と国民の「新しい日常」に対し、市場流通が果たす役割が一層求められる年となるだろう。

f:id:chorakuan:20210110105829j:plain