卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

魚菜市場の破綻−ひだ高山中央市場

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高山市公設地方卸売市場(ホームページより)

2020年6月21日の改正市場法施行日を迎えて、市場再編の動きが激しくなっている。

高山市公設地方卸売市場(岐阜県高山市問屋町6)は、卸2社がいずれも青果と水産を扱う魚菜市場だが、このうちの1社「ひだ高山中央市場」(資本金4600万円)は、ピーク時の年商86億円から32億円まで落ち込み、2020年3月31日、負債10億8千万円を抱え東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

株式会社ひだ高山中央市場

そして経営再建の方策を模索する中で、地元スーパーの「株式会社駿河屋魚一」が青果部門のみを事業承継することになり、6月1日、新会社「(株)ひだ青果市場」(上野芳久 社長)を設立し営業を再開した。
これによって高山市場は青果と水産を扱う高山水産青果株式会社(年商42億円)と二社制度が維持されることになる。

高山市場は用地19,795平方メートルで高山市を中心に16万人を商圏にする地域市場。トマト、ホウレンソウ等、飛騨地方の高原野菜を扱う産地市場でもある。

また高山市場は、平成15年の地方自治法の改正により全ての公共施設で指定管理制度の導入が積極的に推進されるようになったことを受けて、平成16年の稚内公設地方市場に続き平成18年に高山市施設振興公社による指定管理者制度を導入した。
実際は地方自治法改正前の平成11年から公社による施設管理を委託しており、卸売市場として最も早く指定管理者制度を導入した市場である。

スーパーが卸となるケースは、関西中堅スーパー「オークワ」が和歌山市中央卸売市場の卸「和歌山大同青果」の経営を引き受けたケースが初めてである。数十年前には北陸で西友が卸の株を取得しようとして認められなかったケースがある。
改正市場法の大きな特徴の一つは業種の自由化だが、すでに地方市場では高山市場のように青果と水産を扱う魚菜市場は各地にあるほか、青果卸が花を扱い、水産卸が食品を扱うケースは各地に出始めている。

改正市場法後は、地方市場の疲弊が拡大することで魚菜市場が増えるのではないかとの見方もあったが、現実の経営戦略では不採算部門をカットすることで経営の健全化を図る高山市場のようなケースは今後も出る可能性があるだろう。

しかし一方では、ネットオークション企業が花き中央市場の卸売会社になるケース(東京世田谷)や、運送会社が民営地方市場の青果卸売会社となるケース(埼玉上尾)、さらには中堅スーパーが中央市場卸と共同出資で地方市場卸を設立するケース(川崎)など、市場流通を活用して新たな事業展開を図る積極的な経営方針を持った企業の市場参入も相次いでおり、様々な市場機能・運営が展開されてきている。

今まで、卸売会社がネットオークションに取り組むケースや、卸売会社が配送会社も経営するケースはあったが、食品企業ではないIT企業や運送会社が卸の経営を行うことは想定されていなかった。

コロナ禍の中で6月21日に改正市場法が施行され、各市場とも新しい経営戦略を検討しはじめており、今後も予想されていなかった市場外企業による卸売市場経営が出現してくることになるだろう。