卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

2020年の丑の日は7月21日と8月2日

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稚魚の高騰で養殖場は減少している(浜名湖のうなぎ養殖場)

今年の丑の日は7月21日と8月2日である。

前回、川と海を行き来するうなぎは、魚が豊かであることのシンボルとなることを明らかにした調査を紹介したが、もはや天然うなぎは食べることが難しいほど減少している。
天然どころか稚魚を捕獲して育てる養殖鰻も稚魚の枯渇で価格が上がり、消費者にとって手が届きにくい。

高知の四万十川に行った時、河畔のうなぎ料理の店で、「天然は事前注文で、入荷があった時に連絡を受けて初めて食べに行くことができる」と聞いた。
どうしても天然で食べたい人もいるだろうが、天然うなぎがほとんど期待できない今は、無理に天然うなぎを食べるよりも、うなぎの稚魚を生簀で育てる養殖の方が美味しい場合も多い。

そうしたうなぎの養殖で有名な一つが静岡県の浜名湖である。
「浜名湖うなぎ」のブランドで、丑の日の主力供給先であったが、かつて千社あったうなぎの養殖場は激減し数十社になっている。

その「浜名湖うなぎ」のブランドを復活させようと取り組んだのが、浜松市中央卸売市場の卸「浜松魚類」前社長の平井照政氏である。
お元気な頃に「浜名湖うなぎ」ブランド復活をかける思いをお聞きしたことがある。
「浜松の地で水産業に関わる身としての責務だと思う」と平井氏は語っていた。
当時、経営危機に瀕していた浜名湖の養殖場の資金援助を行い、採算的には難しい中を今も浜松魚類は通販等の販売拡大に協力している。

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浜名湖のうなぎ復活に取り組む「さんぼし」のギフト商品

土用は、立夏・立秋・立冬・立春の直前の一定期間をさす季節の言葉なのだが、平賀源内という天才コピーライターによって「土用=丑の日=夏=かば焼き」の情報が脳内にインプットされている。

その伝統が継承されているのか、今の浜松土産の定番は「かば焼き」ではなく「浜松餃子」と「夜のお菓子・うなぎパイ」である。

うなぎパイは「夜のお菓子」のキャッチフレーズだけで今も売れている、というと失礼だが安くて美味しく、若い頃から静岡に出張すると会社の土産にした。

残念だが零落した本家を凌ぐ人気商品である。販促ツールとしてこれほど効果のあるキャッチフレーズは珍しいと思う。グリコキャラメルの「一粒300メートル」と並ぶ名コピーだろう。うなぎパイの経営者は平賀源内の子孫なのだろうか。

実際に平賀源内が考えたのかどうかはともかく、歴史上の偉人などそんなものである。平賀源内の掌(てのひら)で踊り、私もかば焼きでコロナと夏を乗り切りたいと思う。