卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

和歌山市中央市場に「わかやま○(まる)しぇ」オープン−市場整備基本計画に基づく第一弾

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完成した総合食品センター(和歌山市ホームページより)

開設45年を過ぎ市場再整備を進めている和歌山市中央卸売市場(和歌山市西浜1660番地の401)の総合食品センター棟「わかやま○︎(まる)しぇ」が2020年7月2日オープンした。

老朽化した施設の再整備に直面している卸売市場の多くは、施設のコンパクト化と余剰地を活用した「賑わいゾーン」を計画、消費者交流施設等による市場活性化と市場開設者の市場会計健全化を図っている。
豊洲市場や京都市場、福岡新青果市場などの拠点市場でも導入されている。

「みなとオアシス和歌山」の賑わい創生エリア

和歌山中央市場は、平成28年3月に策定した整備基本計画において、①コンパクトな市場整備により余剰地を生み出す、②そこに「道の駅」を整備し、③和歌山港の沿岸地域の開発計画「みなとオアシス和歌山」の周辺地域活性化につながる「にぎわい創生エリア」と位置づける市場整備を行う方針が出された。
今回の総合食品センター棟は、こうした市場再整備第一号として昨年4月に着工し、7月2日にオープンセレモニーを行った。

「わかやま○︎(まる)しぇ」の概要は以下の通りである。

  • 延床面積:2527㎡
  • 店 舗 :飲食店街(12店舗)専門店街(25店舗)
  • 営業時間:飲食店街=2時~14時、専門店街=2時~7時
  • 営業日 :原則として市場休開場日に準じる
  • 営業時間;午前2時頃~午前7時

改正法による取引改善はこれからが課題

和歌山中央市場は昭和49年の開場で市場用地は132,237㎡。青果は卸2社、仲卸23社、水産は卸1社、仲卸32社。
大阪商圏のなかで市場取り扱いは低迷しており、和歌山市は中央市場を和歌山港を中心とした沿岸地域を「みなとオアシス和歌山」の「水軒ゾーン」に位置づけ、港湾物流の拠点としての機能だけではなく大型クルーズ船の誘致を含め「賑わい創生ゾーン」と位置付けた経済効果を計画している。

中央市場もその中の事業として計画されており、卸売市場機能部分を10万㎡程度に集約し、3万㎡を道の駅を中核とした市民交流施設とする計画である。こうした市場整備計画は奈良県営中央市場でも同じコンセプトで再整備プランを打ち出している。

「わかやま○︎(まる)しぇ」はその第一弾であり、ネーミングは一般公募で市内4歳の幼女の応募を採用するなど話題性は十分だったが、コロナの収束がなお見えない状況下での厳しいスタートとなった。
特に「わかやま○︎(まる)しぇ」は従来の「市場関連業者」を集約した施設であり道の駅等との相乗効果をどう図るかも課題となるだろう。
さらに、本体部分の「卸売市場」機能をどのように活性化するかという課題はこれからである。

水産は大阪本場の国内最大の水産卸グループ「うおいち和歌山」であり、青果は産地に強い「和歌山青果」と関西中堅スーパーのオークワが経営する「和歌山大同青果」の二社である。

全国的にも特徴のある卸構成であり、改正市場法は和歌山中央市場の活性化に向けた大きな追い風となるだけに、市場業界としてどのような機能強化を図って行くか、施設整備と合わせた経営戦略が求められている。