名古屋市央卸売市場北部市場(名古屋北部市場)の卸「セントライ青果」は、2022年4月1日に売上123億円の浜松中央市場卸「浜中」の経営権を取得した。
浜中買収は中小企業再生支援機構からの要請により、累積損失が多い本体を市場部門と切り離し、市場事業と加工事業の部分を買収している。
浜中の営業自体は堅実に推移しており、特に加工事業などユニークな取り組みも多く、統合によって123億円の売上が大幅に下がる懸念はあまりないだろうと見られている。
セントライ青果は、改正卸売市場法を追い風に、2020年に名古屋本場の「丸協青果」と合併「セントライ青果本場支社」とし、今回の浜松市場進出と活発な広域展開に取り組んでいる。
セントライ青果の令和4年3月期売上は888億円、「浜中」の売上をあわせると今期は1千億円を達成することになる。
「セントライ青果」は、2016年(平成28年)に丸市青果と名果が統合、「日本の中央部に位置する愛知県を拠点に売上1千億円にトライする」趣旨でつけた社名であり「1千億円達成」は会社設立以来の悲願達成ということになる。
しかし、今のセントライ青果には、「1千億円の悲願達成」という雰囲気は全くない。
「名古屋・東海・北陸のネットワーク」に取り組んでいるセントライ青果にとって、1千億円達成は目標数値ではなく通過地点の数値でしかないのだろう。
「実質1千億円」卸は増えている
旧卸売市場法の時代は、卸売市場ごとの独立卸が原則であったためにグループ卸としての連結決算は統計基準となっていない。
支社体制が増え、商物分離が認められた今、各市場別の取扱高と卸の売上とは別であり実態を反映しなくなっている。
たとえば令和4年3月期決算は、トップが東京青果の2117億円で2位の大果大阪青果が1169億円である。
1千億円以上はこの2社しかないが、R&Cや東京シティ青果、多摩青果、横浜丸中青果、セントライ青果、京果など、グループ・関連会社を含めると実質は1千億円以上となる卸は多い。
そうした意味でセントライ青果は、「セン(千)」ではなく「トライ(挑戦)」が企業としての中心となることは自然の流れだろう。
市場卸から総合食品企業めざす
売上から機能強化の構築を目指す方針について、石原会長は「素材そのものを流通させる手数料業者としての卸は限界がある。人が減り、高齢化が進むなかで消費の形態が変わることはコロナ以前からの流れである。グループ企業と協力して加工主体に付加価値をつけた販売ができる卸に変えていかなければならない」と述べる。
また石原会長は「セントライを除くグループ会社6社は、売上は卸売業に比べると少ないが、全体の粗利の4割を占めている。中核である卸売業の体質を強化しつつ事業スタイルの分散を図る。卸売業を核とした総合食品企業を目指す、そのビジネスモデルを構築していきたい」と述べている。
2022年度中に本場・北部の基本方針を策定
今、名古屋市は本場、北部市場の施設再整備の検討を始めているが、基本は①現在地での再整備、②全面建て替えでなく有蓋化や温度管理など機能強化を目指す施設改修、の二点を基本に今年度中に基本方針を策定する。
その重要な課題の一つがPFI導入であり、市場運営における民間活力の導入をどのように図るかである。
セントライ青果の本拠地である名古屋北部市場は、愛知県豊山町にあり名古屋市内ではない。本場と同じ「名古屋市公設市場」の位置付けで良いのかとの声もあり、セントライ青果も自力での機能強化を図っている。
セントライ青果は、合併時から配送など物流機能を一本化することで、統合した卸のスムーズな融合を目指した。
市場卸棟2階に保冷庫など配送機能の拡充を計画し、「ちゃんと手続きを踏んで要請すれば市や国の支援も受けることはできるだろうが、待っていては遅すぎる」(石原会長)と自己負担で整備を急いだ。
本場、北部市場の再整備に対しどのような方針を出すか、セントライ青果は今、受託品事故損の問題で国税局と係争中であり、一審判決も後1〜2年かかるだろう。
石原会長は「たとえ敗訴になっても2審まではやる」と言っている。結果によっては再び全国的な問題になる可能性も高い。色々な意味で青果市場流通の新しい風となりそうだ。