卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

「卸は手数料業者」は幻想である

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名古屋セントライ青果が産地に支払っていた「集荷対策費」に対し、名古屋国税局が「贈与」であると認定し4年間の累計で7億3千万円の追徴課税を行った。市場法改正よりも大きな青果市場の大問題となっている。

青果市場の卸にとって、実際の売値よりも高い価格で仕切らないと産地からの集荷ができないのが現実である。

しかし仕切り改ざんは違法なので「受託品事故損」として集荷対策費に計上している場合が多い。実際に商品が腐っていた等の「事故損」ももちろんあるが、比率からいえば少ない。

セントライ青果で一年に1億くらいだから中央市場の青果卸68社の「受託品事故損」を合計すると80億円を越すだろう。これに出荷奨励金を入れると、全国ではおそらく100億円をはるかに超えることは確実である。

これが大問題なのはセントライ青果だけでなく全国で数十年前から全国の主要な卸で行われている商慣習だからである。

セントライ青果の1年間の受託事故損は約1億円なので中央市市場青果卸68社を合計すると70億円、出荷奨励金など地方市場の有力卸を入れると100億円を超えるだろう。

卸にとっては集荷のために支出する分だけでもマイナスなのに、その分が課税される。

しかも消費税や売上高割使用料は上乗せした金額で支払われている。二重、三重の負担なのである。

農水省や全中青協と国税局の話し合いは続けられているがセントライ青果が全面的に勝訴することは難しいと見られ、また名古屋だけに限られることも考えにくく、すでに他地域でも動きが出ている。

この「受託品事故損」に対し全国的に課税されると、営業段階で利益が出る卸は限られてくるだろう。産地から卸へ手数料8.5%の収入を軸として経営されてきた青果卸は「手数料業者」としての地位を失わざるを得ないだろう。