卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

集荷対策費とは何か

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「集荷対策費」とは何か。業界関係者にとっては周知のことだが、念のために説明する。

産地は委託で出荷する青果物に対し「この価格で売ってくれ」という希望価格を出し、卸は希望価格通りに売れないと、差額分を負担しなければならない。強制ではないが明日の集荷を確保するために産地と卸の暗黙の了解となっている。

例えばこの野菜を千円で売って欲しいという要請があり、せりや相対で販売し800円でしか売れなかった場合に卸は、実際は800円でしか売れなかったとしても産地には1000円支払う。しかし販売原票を改ざんすると違法行為になる。このため差額の200円を「受託品事故損」として集荷対策費に計上しているのである。同じ趣旨の出荷奨励金と合わせると巨額の支出となる。

青果市場流通における希望価格は指し値とは違う。指し値の場合は、この商品は1000円の指し値がついたことを卸売場に明示しなければならず、800円しか付かなかった場合は、売らないかあるいは産地の了解を得て800円で売るのである。産地の同意があるので200円を上乗せする必要はない。したがって「受託品事故損」はあくまで受託品でなければならず、卸が自主的に上乗せして支払っているという形になっている。

名古屋セントライ青果は、この支出は集荷のための必要経費だと主張したが、名古屋国税局は寄付行為であると認定し2018年3月期までの4年間分を追徴課税、セントライ青果は仮払いした上で訴訟し、課税取り消しと産地対策費の公的な基準を求めるとしている。

ちなみに平成29年度全国青果中央市場の平均営業利益は売上比でわずか0.22%しかない。
一方、集荷するための経費である「集荷対策費」は受託手数料の0.79%を占めている。いかに集荷対策費が全体の収益を圧迫しているか明らかである。
営業利益段階で赤字となっている卸が年々増えているが、有力卸が揃っている東京の卸10社があげている営業利益はわずか22億円で売上比0.4%である。

この営業利益を薄くしている支出の、人件費を除く上位三つが①完納奨励金52億円、②出荷奨励金44億円、③受託品事故損31億円である。10社の営業利益が22億円なのに対し、受託品事故損だけで営業利益の2倍、出荷奨励金を含めると75億円である。

各社とも受託集荷・相対販売が主力になっているが、受託品が増えれば増えるほど営業利益は少なくなり、買付利益も少ない。赤字仕入れでも顧客のニーズに応えるにはある程度やむを得ないが、現状でも採算点ギリギリなのに、そこに課税されると限界を超える。どうすればいいのか。