卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

R&C売上1400億円卸に‐首都圏青果市場の激変加速②

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人口15万人の上田市を拠点にした1400億円卸が誕生する

神明とともに、首都圏市場流通の新風となるのがR&Cホールディングスである。

R&Cホールディングスは、長野県連合青果と長印によって2015年10月に設立され、堀雄一連合青果会長が社長に就任した。
しかしホールディングス機能は公正取引委員会によって5年間の規制を受けた。その5年間、連合青果の堀陽介社長と長印の倉崎浩社長がそれぞれ独自戦略を展開してきた。
その結果として、長印は船橋市場と市川市場の単一卸となり、連合青果は東京板橋市場の富士青果と、今年6月に群馬県高崎市場の「ぐんま県央青果」を取得した。

そして令和4年4月に連合青果と長印は統合する。親会社であるR&Cホールディングスは、長野県の5市場と群馬県伊勢崎、高崎、東京、船橋、市川の10市場を擁する一大サプライチェーンを構築することになる。

R&Cの取扱高は約1400億円、神明グループを上回る規模となる。
全国有数の生産県である長野県の卸売会社は連合青果一社となるのである。流通の効率化は一気に高まるだろう。
さらに隣接する群馬県市場でも伊勢崎、高崎の両市場を持つことで、群馬県におけるトップ市場となる。
そうした大産地の集荷力を高めるという規模のメリットは大きいが、規模の拡大以上に大きなメリットを発揮しそうなのが首都圏への商圏拡大である。

R&Cは東京板橋中央市場に進出しており、千葉の船橋、市川の二つの市場も単一卸として営業している。
首都圏青果市場流通に対する影響力は神明グループに劣らないだろう。

神明の場合は大阪と東京の拠点卸2社が中核となっているのに対し、R&Cは北関東、甲信越、そして首都圏と、商圏はさらに大きな面として各地にサプライチェーンの多彩な物流網が広がりつつある。
首都圏に対するサプライチェーンとともに、長野と群馬という全国有数の大産地のトップ流通企業となることで、さらに効率的なサプライチェーンが構築されることになるだろう。

長野、群馬、首都圏のSCMをどう図るか

長野と群馬、全国有数の大産地を抱え、東京、千葉の消費地市場に進出する。そうした大産地での集荷力を活かした首都圏商圏の拡大を図るR&Cは、神明が展開する関西と東京、点と点を結ぶ広域とはまた違う影響力を首都圏市場に与えることになるだろう。

607億円の連合青果と390億円の長印が統合され、一つの卸となる2022年4月に向け、現在、長野県内市場の体制整備が進められているが、150台のトラックを有する(株)R&C物流などの活用によるサプライチェーンの効率化もまた注目されることになるだろう。