卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

豊洲市場上々のスタート-場内物流の改善に課題

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引っ越しの混乱なし

豊洲市場が上々のスタートを切った。

10月6日、土曜日に築地市場は営業最終日を終えた。

6日午後から10日にかけて、千社に及ぶ築地市場業者が引っ越しを開始、10の日曜日午前5時には臨時に使用が認められた環状2号線を小型搬送機・ターレ100台が一斉に大橋を渡り豊洲豊洲に向けて移動を開始したが、その後は特に混雑はなく、多くは事前に準備を進めていたこともあって、車の渋滞などもなく、10日までの引っ越し作業は混乱なく終えた。

11日は場内、場外ともに大渋滞

しかし、心配されていた11日の豊洲市場は12時過ぎから市場前の通路が混み始め、午前3時ごろには渋滞がピーク、仲卸業者が駐車場に入るまでに2時間かかったケースや、新橋から運行されたバスも30分の予定が1時間以上かかるなど「想定内」の混雑が続き、それに輪をかけるようにターレによる怪我、発火と、救急車、消防車、パトカーが出動するなどトラブルが相次いだことで、一層、車両の混雑は広がった。

入荷は青果、水産ともに大幅増

豊洲市場初日の入荷量は青果、水産ともに大幅増となった。
青果部は、入荷量2540トン(野菜1902トン、果実638トン)といずれも築地最終営業日の3倍。とりわけ野菜は1902トンで、大田市場の2173トンに迫る勢いとなった。12日は848トンと下がったが、それでも築地最終日より35トン増加している。

三日間の臨時休市を挟んだとはいえ、この初日の状況は5街区青果ゾーンにとっては願ってもない好スタート。
水産部も同じく1748トンで350トンの大幅増加と、青果、水産ともに上々の門出である。

課題は、想定されていたこととはいえ車両の道路混雑と場内の物流導線の混乱。
ただし、場外の道路混雑は環状2号線の全面開通によって基本的に解決されるし、場内の混乱、トラブルは主に6街区、7街区の水産部におけるもので、これは事前に指摘されていた立体化施設による場内動線の不慣れさ。

特に道路から直接入ることができる7街区水産卸ゾーンの4階転配送センターに集中し、待ちきれなくなったトラックが通路で荷卸を始めるなどで混乱が拡大、1階は待機駐車場からドックシェルターが混み合うとの事前情報もあって、1階と3階塩干加工品売場が逆にそれほどこみ合わなかった等の初日特有の混乱が多く、解消までにはそれほど多くの日にちは要しないだろう。

これだけ話題になった大市場の開場だけにスタート直後の賑わいは当然とも言えるが、問題は今後。11月に入ると年末商戦が本格化するだけに、10月11日の開場は怪我の功名ともいうべきタイミングの良さとなった。

厳しさ増す場外市場、マルシェ機能の重要性

市場機能とは直接的な関わりはないが、間接的には大きな関わりがあるだろうと思われるのが、築地市場移転後の場外市場の動向である。

場外市場がかつてない栄え方をしたのは、外国人観光客の増加等が大きいのだが、築地市場に影響があったのは主として関連事業者の飲食店で、仲卸にとっても若干の余禄(店売りによる現金収入)があったとはいえ限定的なものである。

築地市場が閉鎖されても場外市場にはそれほど大きな影響はないのではないかと思っていたが、最終営業日の翌日、日曜日に場外市場を回って驚いた。

これまでも日曜日に場外市場を見たことがあるが人が歩けないほどの混雑であった。
しかし7日は違った。日曜日は当然のことに市場は休市で、場外市場だけの集客である。
これまでと変わるところはないはずだが、日曜日の午前8時、大通りの状況は閑散としていた。
その後、10日の火曜日にも築地に行ったが、多少よくなった程度で、客数の減少は歴然であった。当分は厳しい状況が避けられないだろう。

豊洲市場の食文化とは

なぜそうなっているか、築地の主人はやはり築地市場であって、場外は築地市場と一体となって初めて消費者に受け入れられる場となっていたのではないか。
これは卸売市場にとって場外部分や消費者交流施設の重要性がないということではない。
築地は、市場と場外市場が一体となった、いわゆるマルシェ、バザール機能を果たしていたことが魅力の源泉だったのではないだろうか。

もちろん、場外市場がこのまま衰退するとは思えない。築地魚河岸は料飲食店の需要を満たすに十分な店舗が揃っており、供給は主として豊洲市場が担う。
場外市場は豊洲市場のライバルではない、場外市場の繁栄と豊洲市場の繁栄は共通の課題である。

歴史的に築き上げられてきた文化は、歌や踊り、絵画など、多くが日々の糧を得ることを神に祈る儀式から生まれている。文化の発祥は食文化であることは明らかである。

豊洲市場における食文化機能を築地から継承するにはどうすればいいか、場外に建設予定の消費者交流機能を果たす施設は、その施設だけで食文化を担うことはできないだろう。

6街区、7街区でガラス越しに売場を眺めることで消費者が満足するのか、3つの街区に分かれバラバラにある関連の飲食店の食べ歩きは、物理的に無理である。
11日、早朝から取材した私の歩数は1万8千歩であった。

築地市場における関連店舗の栄光は昔日の夢とならないか、豊洲市場の食文化継承は関連、消費者交流施設、市場関係者を含めた検討が必要だろうと思う。