市場は中小企業の集合体である。
しかも顧客は小売店や外食、つまり消費者に繋がる。
何より票が欲しい政治家にとって一か所で数万の票が動く卸売市場は魅力があるのだろう。
そのせいかどうかは分からないが、選挙の年になる小池知事は、2020年に入って1月5日の初市、1月18日の土曜マルシェの最終日、23日の江戸前場下町オープンセレモニーと、豊洲市場だけでも3回来ている。小池知事は大忙しである。
1月23日には、50人以上いるマスコミの前で、山崎江東区長や伊藤裕康豊洲市場協会長とともに立ち食い寿司まで食べるサービスである。
この「江戸前場下町」は2023年春までに水産仲卸がある6街区にできる千客万来施設「豊洲江戸前市場」までのつなぎだが、21店舗と少ないし、面積も店舗も通路も全部狭く、鰻の寝床状態で客の動線がさっぱり分からない。
悪口ついでに言うと、「えどまえじょうかまち」のネーミングも悪いと思う。
「江戸・前場・下町」と読んでしまいそうだ。いかにも卸売市場の実態を知らないインテリが考えた「市場」(いちば)の机上イメージと言う感じである。
業界紙で働いていた頃、豊洲移転特集に掲載するゼネコンの広告を大手広告代理店に取りに行ったのだが、八百屋と魚屋が帽子と前掛けをかけて頭を下げている陳腐なデザインで、豊洲市場の期待される市場像がこれか、このデザイン料は、間違いなく業界紙がもらう広告代より高いだろうと仲間内で自嘲気味に笑った記憶がある。その感覚がいまだに続いているのではないか。
豊洲市場本体は青果部が善戦している以外、水産の卸、仲卸、関連はいずれも苦戦しているだけに、この「江戸前場下町」が少しでも相乗効果を発揮してくれればと思うが、どう考えても誰に聞いても悲観的である。インバウンド観光が新型ウイルスで吹き飛ばされ、輸出1兆円達成もピンチである。楽観的なのは政治家だけだろう。