卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

コンビニ24時間営業は誰のためか

コンビニはフランチャイザー(本部)がフランチャイジー(加盟店)を募集し、出店や品揃え等の経営ノウハウを提供することで対価として賦課金(チャージ)を受け取り経営する事業です。
小売店にとって、もっとも重要な仕入れ・品揃えが全く心配なくなるので、販売ノウハウがなくともお金があればすぐに経営者になることができます。

流通革命と言われた昭和30年代後半からのコンビニ初期の時代は、繁華街にある食料品店や酒屋などの斜陽業種が店舗、従業員を抱えたままコンビニに業種転換し、加盟店が受け取るチャージ率も有利で爆発的に伸びました。
この限りではウィンウィンの関係だったのですが、コンビニが増え、当初は加盟店の近辺に同一加盟店は出さなかったのですが、他店の進出とともに、売り上げが多い加盟店の近くにも同じコンビニが出店するようになりました。
同時に人口密度が薄い地域での出店や本部が用意した店舗を一定の契約金で経営するケースなど、様々なケースによってチャージ率も違い、採算分岐点も厳しくなって来ました。
そうした中でもセブンは他店が日販40万平均の時に60万平均と圧倒していました。

最近、セブンのチーフバイヤー(本部指導員)が勝手に加盟店の発注をしていたことが明るみに出て問題となりましたが、これにも理由はあります。

今でも流通業界の一部に使われている「チャンスロス」という言葉があります。
これはセブンが言い出しっぺで、品切れになったら買いに来た客に売れない、この販売チャンスを逃さないために昨日100個売れたら今日は120個仕入れなさいと言う「指導」です。

いかにも正論のようですが、売れ残っても本部の取り分は増えます。
売れ残っても加盟店は本部にチャージを支払います。販売実績以上に、2割でも3割でも余分な仕入れが増えるほど本部は儲けます。ノルマに苦しむチーフバイヤーは指導加盟店の「売上増指導」ではなく「仕入れ増指導」のノルマがありますので、「勝手」に加盟店の発注分を増やすのです。
「ウィンウィン」ではなく加盟店の負担で本部の利益が増える「(片方だけの)ウィン」です。

スーパーでも一時期は「開店から閉店時間まで棚を空けてはいけない」方針があって、棚を空けると仕入れが切られる、マグロなど真っ黒になった売れ残りを「返品」するなどの「優越的地位の濫用」が問題となりましたが、コンビニの売れ残りは返品ではなく加盟店の売上です。
人件費や光熱費は当然、加盟店負担ですから、コストがいくら高くても売り上げが増えれば本部の利益は増えます。

このシステムだと営業時間は長ければ長いほどいい、できれば25時間営業にしたいのでしょうが24時間が限界です。「セブン–イレブン」(7-11)よりも24時間営業を死守したい。この原因が「コンビニ会計」です。

次に具体的な「コンビニ会計」のシステムを見ます。

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