卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

豊洲市場仲卸の業務停止について

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すでに度々報道されているが、豊洲市場の水産仲卸2社に2018年12月1日から1か月間の業務停止処分が出された。また、東京中央市場労働組合(東中労)も15日間の業務停止処分となった。
仲卸業者にとって、最大の繁忙期である12月を丸々営業できないことは致命的である。
つらいだろうと思う。

東中労事務所に貼ってあったお知らせには「豊洲市場への引越しに応じなかった問題で」行政処分を受けたと書いてあるが(写真)、直接の処分理由は、築地市場は閉場までに原状回復して東京都に原状回復して返還しなければならないが、ただし申請すれば片付けなくとも構わないとなっているのに、申請しないまま店舗施設を使用したことが理由である。

移転後の築地市場仲卸売場を通ったが、帳場も用具もゴミもない本当の原状回復を行なっている仲卸店舗もあったが、多くはそのままである。
当然だろう。
それを、申請しなかったことを理由に豊洲市場での営業停止の処分を行うことは、法律違反と罰則のバランス上、処分権限の濫用ではないか。
道路の左側を歩いて逮捕されるようなものである。

しかし、誰もが知っているように片付けなかったことが処分の理由ではない。

東中労が「豊洲市場への引越しに応じなかった問題で」と書いているように、閉場後の築地市場で制止を振り切って場内に入り、店頭で支援者に水産物の販売を繰り返したことが処分を受けた理由であることは明らかである。

こうした行為を行なった理由の主要な一つが営業権の問題で、これについては訴訟で争われることになるが、問題は裁判の決着がつくまで豊洲と築地の二か所で営業できるのかということである。
これは無理だろう。

疑問に思うのが支援者である。主張が正しいかどうかは十分に聞いているわけではないのでわからないが、何を支援しているのだろうか。

どう見ても、豊洲市場で営業している仲卸が、閉鎖された築地市場内でも二か所で営業できるようにするための支援ではなく、豊洲移転反対の抗議の意思表示なのだろうと思う。

もちろん、仲卸の営業支援もあるだろうし、築地市場移転への抗議の意思表示でもあるのだろうが、意思表示の代償として、零細企業である仲卸の、豊洲市場での営業を台無しにする犠牲をもたらしたのである。

処分覚悟で行動したとすれば、これは失礼な言葉かもしれないが、処分を受けた仲卸があまりにも気の毒だと思う。

悪いのは東京都だ、仲卸が商売できなくなったのも東京都のせいだ、小池知事のせいだ。
これは全て正しいかもしれない。しかし、それで、仲卸はどうやって生きていくのか。

また別の問題かもしれないが、私には東京都に抗議するよりも、仲卸が一社でも多く、豊洲市場で商売をやっていける方策の方がはるかに重要である。

左も右もない、大義を理由に個を犠牲にするのは、沖縄の辺野古埋め立てと同じく嫌いである。
そんな大義は偽物にすぎない。