卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

開設者に新たな難問-全仲卸業者の決算書提出義務付け、業務運営報告書に添付

中央市場、地方市場を問わず全ての卸売市場の法人仲卸業者は、毎年、決算書提出を義務付けられることになった。開設者にとって、申請書や業務規程の策定が今後の重要課題になると思われているが、ここに全仲卸の決算書を添付という難問が新たに加わることになった。

2018年10月4日に開かれた「食料・農業・農村政策策審議会食料産業部会」で「卸売市場に関する基本方針」及び「食品等の流通の合理化に関する基本方針」が一部訂正の上了承され、農水大臣に答申され決定した。

これによって改正卸売市場法関連の法整備は終了し、各開設自治体の業務規程、申請書等の取り組みに移行するが、ここにきて開設者が提出する業務運営報告書に全ての法人仲卸の貸借対照表及び損益計算書を添付しなければならないとする難問が加わった。

省令第16条第1項「中央卸売市場の運営状況の報告」は「毎年度経過後四ヶ月以内に、別記様式第七号による報告書をしてしなければならない」とされている。「地方卸売市場は都道府県知事が別途定めることができる。(省令第30条1項)」

そして様式第七号「運営状況報告書」は、1〜7項目あり、その「6.取引参加者の状況」
は、卸、仲卸、買参人に分かれていて、仲卸の取扱品目、法人・個人別、直荷の状況を記載するとともに記載上の注意事項として「法人の仲卸業者の貸借対照表及び損益計算書を添付すること」と明記している。

様式の注意事項であるため気がつきにくいが、これを完全に実施するのは至難の技だろう。

毎年報告しなければならない運営状況報告書になぜ、全仲卸業者の決算書提出義務が
課せられるのか、開設自治体にとっては大きな負担になる規定である。
特に地方市場にとっては、業務規程を添付した申請書の提出自体が困難な市場も多い
とみられる中で、申請を準備していた公設地方市場にとっても突然の難問となる。

この規定の狙いは、推測だが、取引方法の全面自由化によって、従来の市場取扱高、市場経由率等の統計数字が実際上、出せなくなってくることへの対応策ではないだろうか。
特に取引ルールを完全自由化する中央市場と、従来と同じ取引ルールの規制を続ける中央市場が混在することになると、数字の根拠そのものがなくなるだろう。

そうした事態を避けるための決算書提出という意味合いが強いのではないだろうか。

しかし、様式7は、相当細かい、それも業者の協力を得なければ出せない数字も多い。

地方市場にとっても、都道府県知事が別途定めることができるとなっていても、都道府県は市場の担当者が少なく、様式7に代わる簡素な報告書様式をわざわざ作成できるかという疑問も残る。国の様式7のままになる可能性もあり、そうなるとむしろ混乱することになるのではないだろうか。

国の説明会でも、中央市場開設者から出された「全ての仲卸の決算書を添付して、国は全て読んでチェックするのか、何のために提出させるのか」という質問に対して、開設者が納得できるだけの明確な答えをしなかったという不満も出ている。

こうしたことから国としても何らかの対応をしないと、開設者の義務として規定するだけでは解決しないのではないだろうか。