卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

横浜丸魚とロピアの挑戦-川崎丸魚が10月1日本格稼動

f:id:chorakuan:20181006213652j:plain

川崎南部卸売場


横浜丸魚と量販店ロピアの合弁卸として注目されている川崎南部市場卸「川崎丸魚」は、10月1日から量販店「ロピア」への商品供給を本格稼働した。

当面はトラック14台で川崎、横浜を中心に26店舗向け配送を行う。

川崎丸魚は資本金5000万円(横浜丸魚51%、ロピア49%)で1月に設立、4月に川崎南部市場の「横浜丸魚川崎南部支所」から卸売事業を譲渡され、準備を進めていた。

卸売会社と量販店が半々の合弁で卸を設立したのは初めてのケース。
横浜丸魚が過半数を出資し、グループ企業として責任を持ちつつ、量販店と共同責任でサプライチェーンを構築する試みで、新卸売市場法の下での地方市場の果たす役割・生き残り策として極めて注目される取り組みである。

横浜丸魚は、この川崎丸魚の社長に横浜丸魚専務の橋本和弘氏を送り込んだことに示されるように、横浜丸魚の今後の経営戦略にも大きな影響を与えることになる。

問題はいくつかある。

第一はロピアへの対応がどこまで可能なのか。
ロピアは神奈川県下を中心にスーパー40店舗以上を展開、年間1,000億円を売り上げ、さらに地域、店舗数の大幅拡大を計っている。
一方、川崎南部市場は水産、青果、花きの三部門があり市場用地は32,000㎡。大きな拡大は物理的に不可能である。

第二の課題は、仲卸との関係で、地域市場として鮮魚、マグロ、塩干品を扱っているが、ロピアは塩干加工品が主力である。
仲卸への供給が不足することにはならないかという仲卸の懸念にどう応えていくかである。

第三には、川崎南部市場の機能強化を果たす施設整備をどのように進めるかである。

一方、メリットとしては、量販店が単なる顧客ではなく仕入れから配送、加工、ピッキング等のサプライチェーンを構築する共同責任を負うために、仕入価格と経費が透明化され、卸の健全経営に対する共同責任も生じることである。

当面、川崎南部市場では月間1億数千万円の扱いを計画しており、横浜丸魚、ロピアともに大きなウエイトを占めるわけではないが、今後の市場流通における地方卸売市場の生き方として、一つのテストケースとしての意義を持つことにになるだろう。