卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸はなぜ配送機能を重視してこなかったのか

市場業界にとって、物流の「24年問題」が新たな重要課題となっている。

これまで物流問題は取り組みが強調されてはいても「やるべき」論にとどまる部分が大きかった。
しかし働き方改革関連法に基づき、24年度からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が罰則付きで適用される。

卸売会社は産地から小売に供給するサプライチェーンの中心に位置する存在なのだが、配送の位置付けは一部の卸以外に弱かった。なぜだろうか。

卸売会社にとっては、入荷したトラックは出荷者の責任、販売後の配送は仲卸や買参人の責任、場内車両の動線、駐車場は開設者の責任である。
卸売会社は商物一致取引の原則の下で「卸売場内」の売買取引が終了すれば、その商品の所有権は移転し引き取りや紛失は買った側の責任となる。
実際には売るだけではない多くの作業があるのだが、法的な考え方としては卸売会社が配送機能を重視する理由はなかったのである。

しかし、「来た人に売る」販売方法が「買ってくれた人に届ける」スタイルに変わった。
築地市場時代、取引拡大を希望する量販店の配送トラックが、入るスペースがないという理由で取引できなかったという事態になったように、配送機能は取引拡大と一体の機能になっている。

そこにコロナ禍で「来る人」がさらに減った。さらに「24年問題」である。
卸売場に下ろし、出るまでに2時間、3時間かかるという「場内物流狭隘化」が市場流通のコスト負担、ドライバー不足による物流の停滞まで招く懸念が強くなったのである。
その解決のために出された方針が共同配送など施設面の整備と情報のプラットフォーム整備である。

「物流と情報」機能の整備は、コロナ禍によって「あるべき論」から具体的な課題と作業行程の論議が必要な状況になっている。

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近年は閉鎖型の高床式配送施設が整備され始めている(東京豊洲市場青果部)