卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売業者が新しい機能を付加するか、あるいは新しい機能を持つ企業が卸売機能を付加するか

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卸売市場は集荷と評価、分荷、決済、情報が市場機能の中心である。そして、この「卸売」機能を担う業者が卸売業者であり、この「卸売」機能を効率化するために、I T化や温度管理・保管・加工・配送など市場機能を付加する整備を推進してきた。

ところが、本来は「卸売」を補完する機能を専門とするI T企業や運送企業が「卸売業者」となり「卸売」機能を付加することになったのである。

なぜこのような「卸売業者」の変化が生まれたのだろうか。
そのことをスーパーが卸売業者となった和歌山と川崎のケースで説明する。

スーパーは通常、市場業者の顧客であり買い手である。その買い手が卸、つまり売り手になる理由は何だろうか。
旧市場法時代に参入した和歌山中央市場と、改正市場法の規制緩和の方向が明らかになってから参入した川崎南部地方市場では全く違っている。

数十年前に北陸で西友ストアが水産卸に出資しようとして認められなかったが、和歌山中央市場は、地元中心に店舗展開しているスーパーが、仕入れ先の卸が経営危機になったことで卸への経営支援を要請され、ある意味、仕方がない形で卸のオーナーとなっている。
旧市場法の時であり、スーパーが卸の経営権を取得しても場内に自分のスーパー向け配送センターを建設することは認められない。今までと同じように市場外にあるスーパー配送センターに市場から運んでいて、取材した当時の責任者は市場卸のオーナーになったメリットは全くないと話していたが、実際、その後の取り扱いは増えなかった。

これに対し、改正市場法が明らかになった段階で取り組まれた川崎南部市場は、スーパーと横浜丸魚が合弁で水産卸「川崎丸魚」を設立し、特定スーパーに配送する商品を集荷・配送している。
仕入れだけなら卸になる必要は全くないのだが、川崎の場合は和歌山とちがい、特定スーパーを中央市場の卸がバックアップする形での合弁卸である。スーパーのメリットは大きく、水産卸の多くが苦戦する中を、川崎丸魚は取り扱いを大きく伸ばしている。
仲卸は10数店舗あるが、核となる販売先ができて仲卸向けの集荷・分荷も以前よりもスムーズになっている。大手スーパー向けの仲卸がいない地域市場だからできたということでもあるのだが、このケースも地域市場の活用という面で参考となるケースだろう。

運送企業にとってもI T企業にとっても状況は同じである。埼玉上尾地方市場の青果卸となった運送業者は「自分たちは顧客の荷物がないと仕事にならない、配送時間も自由にできない、それなら卸となり、自分が顧客の立場になって自分の荷物を運ぶ仕事を作り出そう」との目的で、現在は24時間配送体制をとっている。
卸売業者は「卸売」業務を行うだけの企業ではなく、産地・生産者と小売・消費者を結ぶサプライチェーンをマネジメント(経営)する企業となることが求められるようになった。