卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

第22回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー〜HACCPの講演を聞く

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例年の三分の一規模で行われたシーフードショー

2020年9月30日〜10月3日まで東京ビッグサイトで行われた「第22回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」に行った。
コロナ禍で規模・入場者数は例年の三分の一となったが、それでも商談会などの機会が難しくなっているなかで海外を含めて約300社が出展している。
主催の大日本水産会はじめ出展企業は大変だったと思う。開催に漕ぎ着けることができ、無事に終了できたことで十分成功だと思う。

セミナーも三日間で18のテーマで行われた。
私は海洋水産システム協会の岡野利之氏による講演を聞いた。HACCPの産地市場向けで、テーマは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」である。

HACCPは食品衛生法の一部改正によって来年6月に1年間の準備期間を終えて、全国の食品事業者すべてに原則義務化される。

法改正から2年という長い期間を経ているだけに、これまでもHACCPの講習会は何度か聞いていて大まかな内容は知っているつもりだったが、非常にわかりやすく参考になった。

産地市場向けに衛生管理の指導を行っている岡野氏だが、消費地市場や小売の業種を超えて学ぶ点が多い。HACCPの内容は省略し、講演を聞いた感想代わりに学んだ点を列挙しておく。

  • 「人手がない、実際に作るのは難しい、施設が老朽化していて衛生管理は無理」 食品衛生法はハード面への言及は全くない、機械や装置は必要ではなくソフトで対応できる。また衛生管理の資格者を置く必要はない。「HACCP」ではなく「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」である。日頃やっている掃除や手洗いなど基本の延長線上にあり難しくはない。
  • 「衛生管理はやっているし事故も起きていない、経費もかかるし計画を作る必要はない」 衛生管理は世界的な潮流であり計画を作って実行した方が食の信頼が増すなどメリットは大きい。公の機関や大日本水産会、海洋水産システム協会など国の助成を受けているので経費負担もない。やらない方がデメリットは大きい。
  • 「計画を作らないとどうなるのか」 すぐに営業許可の取り消しにはならないが保健所から指導されイエローカードになる。何かトラブルが起きると、即レッドカードの可能性もでる。そこまでのリスクを抱えて衛生管理計画を作らない理由はない。
  • 「どうやって作るかわからない」 厚労省のホームページに93業種の「衛生管理計画のための手引書」がある。多少違っても似ている業種は必ずある。基本は同じだから、ほとんどそのまま使ってもいい。

岡野氏の講演は水産の産地市場向けであるが、どの業種でも参考になるだろうと思った。
HACCPが義務化されるといってもすべての食品事業者が衛生管理計画を持つことは難しいだろうと思う。零細な業者ほど難しいかもしれない。
しかし人的な負担、経費面での負担がなくともやれる制度であるし、何より「リスクゼロ」ではなく「問題が起きた時」の対応を決めておくことは信頼度を高めることになるだろう。零細だからこそやってほしいと思う。