卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

賑わい機能と市場‐対面販売の課題

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移転前の築地市場関連棟の飲食店
街消費者は市場のどこに魅力を感じているのだろうか

市場流通における対面販売機能は、主に仲卸と関連が担っている。
旧卸売市場法は売買参加者制度と仲卸制度を導入することによって、集荷は卸、評価と分荷は仲卸とする役割分担を図った。
これが市場流通の発展を招いた大きな要因なのだが、eコマースの発展によって、この垣根もなくなった。売る側の役割分担ではなく買う側の都合によって買参人として卸から買うか、あるいは仲卸から買うかを選択する時代になったのである。

賑わい機能とは何か、誰が担うか

「賑わい機能」とは曖昧な表現で、本来はeコマースを含め、広く市場活性化に役立つ全てを含むのだろうが、近年使われている「賑わい」は消費者も含めた市場内販売であり主に関連事業者を中心に取り組まれている。

しかし、関連事業者だけが賑わい機能を担うことは無理である。
なぜなら関連事業者は、かつて「付属業者」が正式名称であったように、市場業者や買出人が便宜的に買える長靴や包装紙、調味料などを販売することが主な役割だった。
それが「関連事業者」となり、役割も「付属」から「市場の顔」とされたのだが、これは市場の都合であって、消費者の側からすると最大の魅力は魚だろう。
実際、関連主催のイベントで入場する消費者の多くは水産仲卸に流れている。また多くの水産仲卸もそうした対応をしている店が多い。

しかし、一般消費者への販売は、現金収入のメリットは大きいが売上全体から見るとわずかである。
仲卸の店舗販売は小売・料理飲食店が主で、どこの中央市場もまず関連が主体になって、それに仲卸が付随的に協力するという形式が多かった。

この方式で成功したのが築地市場関連である。
築地市場関連事業者組合は、地下鉄「築地市場駅」開通に合わせて「魚河岸横丁」の秀逸なネーミングで大成功した。
寿司屋が並ぶ通りは早朝から昼の閉店まで行列ができる盛況で、ここから場外市場と協賛という形で、築地地域の「賑わいエリア」が形成されたのである。もちろん、一方では長靴や包装、包丁専門店があるなど「付属業種」も混在することが魅力でもあった。
つまり、関連事業者は従来の「関連」と、一般消費者も対象とする「地域への顔」の、二つの役割を持っているのである。

同じように、仲卸もまた量販店を中心に「配送」を主なツールとして販売する店と、買い出しに来る寿司屋、料理飲食店に売る「店舗販売」の二つの機能に分化している。

関連事業者はなぜ「市場の顔」になり得ないのか〜再整備の難問となっている関連棟

水産や青果が参加せず、関連店舗だけが「市場の顔」として消費者に販売することは、ある意味、消費者に対して不誠実なことではないだろうか。

今、コロナによって非接触販売が伸び、対面販売が減ることで市場流通は大きな打撃を受けた。
その反省に立つならば、今、卸売市場に求められている役割は非接触販売への対応と対面売りの場、地域住民に対する食の楽しみを提供する場の「二兎を追う」ことだろうと思う。
配送を中心とする「卸し売りエリア」と対面販売を主とする「賑わいエリア」はともに市場機能として担うべき役割である。
関連事業者も仲卸も、業態を分化し、卸し売り機能に付属する業種とそれ以外の業種・飲食店にわけ「賑わい業者」とすべきではないだろうか。