卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

「賑わいゾーン」は市場機能か

f:id:chorakuan:20191129233141j:plain

2019年9月20日オープンのブランチ横浜南部市場

消費者開放はイベントなのか、あるいは市場機能の一つなのだろうか。

卸売市場の中に消費者の一般開放施設を設置する動きが広がっている。
初めは関連店舗の不振を打開するためで、次に仲卸も参加し、卸も商品供給で協力する市場全体のイベントとなった。
それがさらに変化し、横浜南部市場や和歌山市場、奈良市場の賑わいゾーン等の施設となっている。
関連店舗の活性化ではなく「賑わいゾーン」とした目的は、卸売市場を社会的インフラと位置付け、「卸売機能」と「地域開放機能」に分離し、消費者開放施設を設置することで、市場の健全経営に貢献するためである。
こうした取り組みは民営市場が先行し、準公設(第3セクター)市場が行政のイニシアティブで取り組み、地方公設市場、そして中央市場へと広がった。

先だって、横浜本場の市場まつりと横浜南部市場の賑わいゾーンを見た。
横浜市場まつりも例年以上の人出だったようで、もともと第一、第三土曜日は水産仲卸売場を消費者開放デーとしていることもあって定着してきているのだろう。

奈良、和歌山が目指している方向に最も近いのが横浜南部市場の「ブランチ横浜南部市場」だろう。卸売市場を廃止し、物流ゾーン(12万㎡)と賑わいゾーン(4.7万㎡)に分けて9月20にオープンした。

二ヶ月近く経った土曜日に行ったが駐車場は満杯である。旧関連売場をそのまま使った関連「共栄会」売り場も大変な賑わいで、集客の中心はスーパー「ave(エイビィ)」だが、青果売場だけに限れば客は明らかに関連棟の方が多かった。失礼ながら意外だった。
スーパー、薬、家電の大型売場を中心に開発された賑わいゾーンは、薬や家電の大型店は客の入りが悪いにもかかわらず全体として活気がある。市場とは関係ないが集客力は高い。

市場資料館もあるが市場機能とは全く別個で相乗効果は全くないだろうと思う。
独自に集客力が高いのは規模の大きさ、立地の良さ、これまで毎年の市場まつりで数万人を集めてきた実績等が挙げられるが、その他にも「ブランチ横浜南部市場」とあくまで卸売市場の一部であることを名称にしていることもあるのではないだろうか。

また、市場関連棟をそのまま残して市場の売り方をしていること等、当初計画通りではないだろうが、その市場らしさが結果的にプラスになっているだろうと思う。
ひょっとしたら、業界での評価の低さは間違いではないだろうか。土地さへ確保できればこうした「賑わいゾーン」も集客力という面では悪くないと思った。

マイナス面としては料理飲食店スペースが決定的に少ない。
共栄会の共同食堂スペース以外は喫茶店と車の移動販売が主である。市場のイメージを活かした「食」ゾーンの充実が今後の課題だろう。

「市場機能の活性化」という面だけでなく、市場機能と賑わい機能が共存する都市インフラ機能として捉えることも十分意義のあることではないだろうか。