卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

非接触、非対面型物流と水産市場‐eコマースの取り組みはなぜ遅れたか

卸売市場はeコマースや物流への対応が遅れているとの指摘は昔からあったが、これは必ずしも市場業者の責任によるものではない。市場流通において「市場に来る人に売る」商物一致の取引原則が全面的に改められたのは2020年の改正卸売市場法施行からである。

もちろん部分的には認められていたし、広域流通やeコマースに取り組み成功している卸、仲卸はかなり前からいた。
ただ、商物一致による公正・公平・公開の原則が長く続いたことで、情報機能やeコマースへの取り組み、販売のための物流機能の整備が国・開設自治体を含め遅れたのである。

国は市場取引の原則を「公平」から「効率」に変え機能強化を図ってきた。しかし、その取り組みはコロナ禍が必要とするスピードに追い付いていなかった。
コロナ禍は緩やかな変革を許さなかったのである。

ウーバーイーツ・宅配、ネットショップ・通販などの分野で、BtoB(企業から企業)、BtoC(企業から消費者)、CtoC(消費者から消費者)などの多様なeコマース(電子商取引)は、コロナ禍の非日常生活の状況下でさらに伸び、日常生活に定着するまでになった。
日常生活を散り戻すことができるようになれば外食分野は一定の復活があるだろうし、eコマースは一定の収縮があるだろうが、それはコロナ以前の日常生活とは違う世界となるだろう。

卸売市場は、非常時にも日常時にも機能を果たしていくことが求められている。とりわけ災害時や高齢化社会における「非接触販売と非対面販売」の社会的ニーズはさらに高まるだろう。

Eコマースへの対応や配送機能を整備することは、国がいう「新しい生活への対応」ではない。「非常時の非接触販売と日常的な対面販売」の垣根・カテゴリーは崩れ、現代社会の中で共存することがすでに日常になっているのではないだろうか。

「非接触販売と対面販売」はともに重要な市場機能であるという極めて常識的な視点が必要だろうと思う。

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高松市場うみまち商店街のロゴとマスコットキャラクター「せとりん」香川県立高松工芸高校工芸科デザインコースの授業の一環として制作された。eコマースでも活躍している(高松市場開設者の使用許可済み)