卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

【寄稿】緊急事態だからこそ取り組める−卸売市場でドライブスル-販売を活用しよう

 

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2020年4月25日N H Kで放映された高崎市場のドライブスルー販売

先に紹介した卸売市場におけるドライブスルー販売は各地市場に広がりつつある。

4月25日に実施した高崎市場の「関越冷蔵」米桝 秀二専務がまとめた高崎市場の取り組みと呼びかけを紹介する。

高崎市総合地方卸売市場(有)関越冷蔵

米桝 秀二

高崎市場では水産荷受と仲卸の団体である水産仲卸会(12社)と冷蔵庫会社が協力して、水産物のドライブスル-販売を4月25日(土)に初めて試験的に実施した。

水産仲卸会がアジ開き、たらこ、しらすなど6品目の「市場直売セット」(税込み2000円)を用意し、地元新聞社に記事で周知を依頼、地域の消費者が市場内に用意した受け渡し場所で車に乗ったまま購入してもらう方法をとった。

はじめは50セットの予定だったが、予想外に注文電話が殺到し、5倍を上回る数量を2時間で完売する結果となった。この動きはNHKでもニュ-ス報道され、次回はいつかなど問い合わせ電話が今も続く。

ス-パ-の多くは人出でにぎわっているが、密集による感染の不安と隣り合わせで問題となっている。一方、ドライブスル-販売を実際にやってみると、広い駐車場を備え産地直集荷ができ、冷蔵庫施設も完備している卸売市場は、安全で安心でしかも安価な(3安)ドライブスル-販売方式に適した施設であり、又たいへんな需要が見込めることを実感した。

緊急事態宣言下、市場の納め先である飲食店、温泉地の宿泊施設等の多くは動きを止めており、市場の荷受も仲卸も売上が激減し、たいへんな苦境に立たされている。

この事態が収束するまで数ヶ月なのか、あるいは数年に及ぶのか。その間に事業や従業員の雇用を守りぬけるのか。給付金や雇用調整助成金等の公的支援制度や開設者の使用料減免措置に頼ることも必要だが、公的支援だけに依存して生き残れる事態とは思えない。そもそも公的支援も本質的には国債等による借入金であり、いずれは税金(増税)で返さなくてはならないものである。

窮地を乗り越えていくためには、感染拡大の状況下でも実施できる新たなビジネススタイルが必要である。近く国民1人に給付される10万円にしても、商品販売の手段を持たなくては、市場関係者にその恩恵は望めない。

ドライブスル-販売は、卸売市場業者にとって、すぐに取り組める販売方式であり、緊急事態下で市場を活用して実施できる施策のひとつとして、全国の市場業者が積極的に取り組んでもよいのではないかと考える。青果、水産、花きを問わず、埼玉県の上尾市場、神奈川県の川崎南部市場、兵庫県明石市場、静岡県清水市場などでは、すでにスタ-トされている。全国の卸売市場関係者は大きくドライブスル-の旗をあげてはどうだろうか。