農水省はこのほど、8月末時点における新型コロナウイルスの卸売市場に対する影響とその対応策についてまとめた。
1.取扱高の状況
コロナ禍における卸売市場の令和3年1-6月は、青果が24市場、約半数の市場がコロナ前より取扱高を増やしたのに対し、水産は34市場のうちコロナ前より増加したのは2市場のみ、他の32市場は10%〜50%減少と大きな打撃を受ける結果となった。
青果と水産でこれだけ状況が違った原因は量販店と外食への対応である。
水産は仲卸の販売先が小売や、料理飲食店、ファミリーレストランなど業務用が多く水産市場への買出し人が激減した影響を受けた。
これに対し、青果の中央市場卸、仲卸の販売先は量販店主体である。コロナ禍の自粛生活によって家庭内で食事をする内食需要が増えたことで量販店の売り上げが伸びたことが大きな要因となっている。
青果と水産の違いはコロナ禍による生活の変化という特殊な事情によるものだが、コロナが今後一定の収束をしたとしても、市場仲卸の店舗販売がコロナ以前の水準に戻るとは考えにくい。
水産の中でも通販・宅配などでは大きく伸びている企業があり、仲卸も量販店主体と業務用主体では大きな違いが出ている。卸、仲卸ともに一つのカテゴリー(範疇)で景況は判断できなくなっている。
各部門の概況は次の通り。(一部、地方市場卸含む)
(表1)2021年1-6月取扱金額とコロナ前2019年1-6月の比較
青果 | 水産 | 食肉 | 花き | |
±0%〜 | 24 | 2 | 7 | 4 |
〜▲10% | 24 | 4 | 2 | 10 |
〜▲20% | 2 | 19 | 1 | 2 |
〜▲30% | 9 | |||
〜▲40% | 1 | |||
〜▲50% | 1 |
(表2)2020年度の年間取扱高とコロナ前2018年度の比較
青果 | 水産 | 食肉 | 花き | |
±0%〜 | 20 | 1 | 3 | 2 |
〜▲10% | 26 | 5 | 4 | 3 |
〜▲20% | 4 | 20 | 3 | 9 |
〜▲30% | 7 | 2 | ||
〜▲40% | ||||
〜▲50% | 1 |
2.行政支援
①市場使用料等の負担軽減
使用料減免は40都市中、16都市が実施、いわき、大阪市、大阪府、宮崎市は現在も実施中である。
実施していない都市は24都市だが、この中では新潟市と岡山市は市場施設使用料の一部減免に相当する額を支援金として支給している。
②支払猶予
40都市中、28都市で実施、未実施は12都市である。札幌、東京、横浜、長崎は現在も継続中である。
③主な経営支援
・各種支援制度の情報提供
・雇用調整金等に関する相談会、オンラインセミナー実施
・地方創生臨時交付金を活用した補助制度の実施
・車両費など固定費補助
・飲食店と取引のある市場業者に対し一時支援金支給
④需要喚起につながる支援
・中央卸売市場活性化支援事業の補助率の拡充
・ふるさと納税返礼品の取扱業者への支援
・ドライブスルー販売への支援
・ECサイトを活用した販売の多様化への支援
・オンラインを活用した「和食料理教室」や「バーチャル産地見学会」
・ホームページ立ち上げ、食事代の割引サービス、花きクラウドファンディング