卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

業務規程・申請書をめぐる課題-その1

改正市場法が成立し、2020年の施行に向けた準備が進んでいる。

9月以降に予定されている農水大臣が定める基本方針と政省令を踏まえ、2020年6月の改正卸売市場法の施行日に向けた都道府県の条例、市場業務規程と申請書の作成準備に入る。

以下、総論から各論に移った改正市場法の課題について、まず、基本方針、政省令のスケジュールと、民営市場を含めて全ての卸売市場開設者に求められる公共性について、とりわけ開設者として申請しなければならない民営市場のメリット、デメリットを検証する。 

基本方針、政省令スケジュール

農水大臣が定める基本方針と政省令は農水省内での検討が順調に進んでいる。

政省令の公表は「秋口」という表現で説明されているが、農林部会など国会内での説明・調整を経た後で、約一ヶ月間の「パブリックコメント期間」《行政の政策方針決定に際して行われる、国民に対して公(パブリック)に、意見(コメント)を求める期間》が設けられるので、9月末頃までのパブコメ期間を経て、最終的に「食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会」で答申されるのは10月に入ってからになるだろう。

改正卸売市場法は、届出制をとることで取引原則はじめ共通ルールを除き基本は自由・選択できる当事者責任であり、許認可を柱とする規制が基本である現行卸売市場法と大きく違っている。

このため、改正卸売市場法は全文19条と短く、公共性を維持する取引の共通ルールによる規制が中心となっている。

8月17日に行われた自民党農林部会に出された基本方針と政省令の案は、基本的な内容だけで、長く複雑なものではない。

都道府県の条例は少なくなる

市場業界では、政省令が公表されないと各都道府県の条例、市場開設者の業務規程論議に入ることが出来ないという受け止めがある一方、すでに業界を含めた検討を始めた卸売市場もある。

現行卸売市場法は「条例により定める・・・・・・」という規定条文が数多くあるため、どうしても都道府県段階での条例が必要であったが、改正卸売市場法ではそうした規定は無い。

このため、議会での承認を得る必要がない「通知」等で対応しようとする自治体が多くなるだろう。

求められる開設者の公共性

改正卸売市場法は国の関与を大幅に減らす一方で、国が現行法の規制によって担ってきた公共性は地方自治体が担うことになる。

斉藤農相は国会質疑で「認可から認定にすることは、確かに国の関与というのは弱まることになる。それに伴い、新しい規制が入っている。全体を見れば国の関与が弱まった中で、必要な物が少し入っているというのが、この(法案の)構造だ」「(2018/06/15日本農業新聞)と答えている。

この必要最小限に入れた国の関与(あるいは規制、あるいは公共性)の具体的なものが開設者の役割・位置付けの強化である。

さらに言えば、開設者は従来の市場の、管理運営を行う「管理会社」機能から、最小限の公共性を維持しながら、卸売市場を営利企業として経営する「運営会社」にすることが改正市場法のめざす方向ということである。

改正市場法下では、開設者の役割が決定的に重要になる。

その機能が最小限であっても、開設地方自治体にとっては、とんでもなく大変な重荷になるだろう。

特に都道府県は地方卸売市場の申請を受けて認定することになる。

従来は国が中央市場用に作成した業務規程のサンプルをそのまま使用できたが、今回は市場ごとの申請書が共通ルールなどの要件をクリアしているかを判断する責任が生じている。

つまり国に代わる卸売市場の公共性維持の責任は、都道府県と民営市場を含めた全ての開設者に求められてくるのである。