卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

一般会計操出基準

改正市場法の根幹は原則規制から原則自由に転換したことである。

そのこと自体は問題ないのだが、自由と自己責任はセットである。

言い換えれば公設市場における市場会計のあり方であり、行政責任分と業界責任分の考え方の問題である。

市場会計において行政責任分とされるのが一般会計操出分であり、これがどの程度かは総務省から操出基準が通知されている。現在は30%である。

そして、この一般会計繰り出しは卸売市場法制定時に規定されたものではない。

初めて導入されたのが昭和49年で、10%の繰入が認められた。

次いで次のように改訂されている。

  • 昭和50年 20%
  • 平成4年 25%
  • 平成5年 30%

前回述べたように一般会計が負担すべき経費は例示として8項目程度(法で規定されているわけではない)が考えられているが、この一般会計操出の基準となっている行政負担の事務経費は、今回の市場法改正によって大きく削減されることになる。

これはある意味、当然であり、規制を原則とする以上、その規制を守るための監督・指導する経費が行政負担分と言うことになる。

具体的には前回出した8項目の実務手続きである。

例えば早朝の取引指導・監視、開設区域外販売や第三者販売・直荷の届け出で・許可、買参人の申請・認可、取引原票の日報報告・管理等々である。

市場会計の健全性を実現することは言うまでもなく「出」を抑えることと「入り」を増やすことである。

これらを並べただけでもかなりの事務量があることは明らかだから、市場会計の行政負担軽減にも大いに役立つだろう。

改正市場法についての評価はいろいろあるが、政策としての方向性は明白であり、行政関与の減少と市場会計における業界責任の増大であり、市場を経営体として健全経営(つまり黒字経営)できる開設者機能の創出である。

民営市場では開設者機能と卸機能が一体化した経営体として機能しており、問題は複数の市場業者が営業する公設市場である。

使用料と一般会計繰入金を柱とする市場経営から、一般会計繰入を減らし、使用料以外の収入をどう拡大できるかという課題に直面しているのである。