卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場の命運にぎる物流-その1

物流からロジスティクス、SCMに

最近知ったのだが、役所用語に物流という言葉はないらしい。

改正卸売市場法にも「流通の効率化」という言葉が使われているが、これではイメージが広すぎてなんでも入ってしまう。物流を文字通り解釈すると、n点からn点へのモノの移動であり、配送という狭い意味にとられかねない。

そこで物流に代わり、ロジスティクスという言葉が使われ始めた。これは日本語では兵站(へいたん)で、もっと意味がわからなくなるので、ロジ、ロジと言われていたが、兵站とは軍事用語で物資や人員の輸送・補給体制を意味しているらしく、これも今ひとつピンとこない。

サプライチェーン(SC)は、生産から消費までの流れを表す言葉であり流通業界にピッタリである。

しかし問題はある。SCを構築しようとするとコストは増える。SCとコスト削減をどう図るか。その経営的視点を入れてサプライチェーンマネジメント(SCM)となった。

それでもSCMというと一般的すぎて、具体的な方針を示すものとはなりにくい。

SCMをもう一歩進めて、バリューチェーン(SCMでどう儲けるか)、サードパーティロジスティクス(物流を包括的に行う荷主でも運送会社でもない第三の事業者・3PL)、ブロックチェーン(物流だけでなくハセップ、トレーサビリティ等の情報も一元化)など、各論に入ったSCMのビジネスモデルが様々に考えられている。

一時、イオンが取り組んだバーチカル(垂直)流通は、産地から小売までをイオン主動でSCMを構築するビジネスモデルを目指したが、全体としては垂直の一本化から水平の協働化が主流となっている。

様々な言葉が並ぶが、基本は同じで、どうやれば儲かるか、儲かるツールとしての考え方が模索されているのである。

市場と物流に対する国の考え方の変化〜物流拠点としての市場活用

平成28年9月に出された規制改革会議は「卸売市場は物流拠点の一つになっている。
抜本的に見直し、卸売市場法という特別の法制度に基づく時代遅れの規制は廃止する」という提言を出した。

卸売市場が物流拠点の一つだという認識は、規制改革会議が初めて出した考え方ではない。

平成17年7月に出された農林水産省、経済産業省、国土交通省3省共同提案「業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」は、絶好の立地条件にある卸売市場を物流拠点として位置付ける政策が出されている。

この時の資料に「物流が多段階で高コスト」「(市場をカットした)ダイレクト物流でコストダウン」という刺激的な図が出されたが、産地から小売までトラックが一本道を走るこの図は、全国に無数にある産地・生産者からのサプライチェーンをどうするかという生鮮食料品の特性を全く理解していない構想であり、3省共同ということもあって全く進まなかった。

この時の教訓を活かして変化したのが「卸売市場の否定」ではなく「卸売市場の集荷機能を活かした物流機能の活用」である。ここで初めてサプライチェーンマネジメント(SCM)の考え方が導入されたのである。

そしてこの方向の集大成として卸売市場法の改正がなされ、農業に続き漁業の分野でも漁業権の民間参入が図られているのである。

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