卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

包丁とまな板

一時期、子供たちが肉ばかり食べていると大人になっても野菜や魚を食べないのではないかと言われましたが、現在、日本の食文化は世界に広がりつつあります。

平均年齢がどんどん上がってきても、そうしたアンバランスな傾向は出ておらず、高齢化社会になったからといって野菜や魚の消費が伸び肉の消費が減るということはありません。

アメリカでも高齢化は進んでいるでしょうが、だからといって肉の消費は極端に減ってはいないと思います。日本食ブームは、食の選択肢が多様化したということではないでしょうか。

日本食に包丁とまな板は欠かせません。

私が時々行っている栃木県小山の県南市場で聞いた話ですが、小山市にある高椅神社(たかはしじんじゃ)は「料理の祖神」磐鹿六雁命を主祭神とする最も古い神社で、毎年、秋には「包丁式」があり、全国から料理人が集まる料理人の聖地だそうです。

行きたいとは思っているのですが、場所が離れていることと日程が合わずに祭りを見たことはありません。

私の友人でグルメが嵩じて大学院で「美食学」の修士号をとった変わり者がいますが、その受け売りです。

料理人はかつて「包丁人」と呼ばれていましたが、包丁とまな板を儀式化したのは室町時代の「四条流」で、料理作法を定めた「庖丁式」によって公家社会に広まったとのことです。

西洋では切るより煮る、盛るが主ですから貴族の財産一覧には銀の食器とともに鍋も重要な財産だったとのことで、食文化の違いがこうした面でも表れています。

まな板は「俎板」「真魚板」「真菜板」という字をあてます。

真魚とは鯉のことで今も五穀豊穣を願う神社の奉納は野菜と魚で、最近は鯛が多いようですが、海よりも川が身近ですから本来は鯉だそうで、高椅神社でも鯉が神聖な魚として食べることも忌避されているとのことです。

また、卸売市場では今も「蔬菜」(そさい)という言葉が使われていますが、これは栽培された植物という意味で明治以降にキノコや山菜などの「野菜」と区別して使われていましたが、今は青果、野菜と果実、あるいは青物という使い方が一般的です。