卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

公設市場が認定申請できない?

先だってある市場開設自治体の職員から「中央市場であっても卸売市場の認定申請書を出せないかもしれない」という衝撃的な話しを聞いた。

どういうことなのか。
「開設区域の廃止や商物分離など取引規制の廃止によって開設自治体が税金を投入する根拠がなくなった。一般会計操出を見直すべきだという意見が議員から出ている」とのことである。

開設区域の廃止と公共性とは直接結びつかないことは既に述べたが、市場会計の収入の大きな柱である一般会計繰出を認められなければ市場会計は成り立たない。

そうなれば、公設市場は民営化せざるを得ないが、用地、施設が公有である公設市場の民営化は市場業者の協力が必要である。容易なことではない。

しかし、公設市場の多くは毎年、議会の承認を得て一般会計操出を行っている。なぜ申請出来ないのだろうか。

それは改正市場法で、認定要件として申請書の中に「卸売市場を維持できる財務力」を証明する書類添付が義務となったからである。

本来、この規定は、民間でも中央市場を開設することが出来るとする条文を補完するために開設会社としての財務基盤を要件とするためであり、地方自治体の財力を要件とすることは想定されていない。

しかし、申請書の認定要件は中央市場と地方市場、公設と民営市場ともに殆ど差はない。
改正市場法を見よう。
改正市場法第4条第2項は「次に掲げる事項を記載した申請書を農水大臣に提出して、同項の認定の申請をしなければならない」とあり、八つの事項あげ、その一つが「卸売市場の業務の運営に必要な資金の確保に関する事項」である。

この項目の狙いは開設会社としての企業の財力を審査するものである。

国の説明会でも「公設市場の業務運営に必要な資金確保」は地方自治体が開設者であれば問題ではないとしており、民間企業対象を明確にしているが、そのバランスシートは開設初年度だけなのか、2年間なのか、あるいは3年ないし5年となるのか、詳細は今秋公表予定の「農林水産省令で定めるところにより」となっている。

仮に3年ないし5年となると、その間の収入予定に従来と同じ額を入れていいのかということになる。

初年度だけとなると民間企業の審査には実際は無理なので2年は必要となるが、2年以上となると、議会で問題となる自治体も出てくるだろう。

最初に述べた開設自治体職員の懸念は、そうしたことが決してあり得ない話しではないことを示している。

どうすべきか、市場会計のあり方を改めて検討することも開設自治体、市場業界ともに求められているのではないだろうか。