卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

パーソナル情報システム(株)PJS第29回全国生鮮フォーラム

2018年8月28日から30日の三日間、東京築地のJJK会館で開かれたパーソナル情報システム(株)(PJS)の第29回 全国生鮮フォーラムを取材した。

毎年2回、多彩な講師を招き無料で行われていて今回で29回を数えるフォーラムである。
それにしても今回は、主催者のPJS片桐社長が「これほどの反応は初めて」というほどで、三日間とも百数十名が参加する盛況であった。

PJSは中堅のIT企業である。

一民間企業が、三日間、社員を動員する労力をはじめ、いろいろなコスト負担をして、その見返りはあるのだろうかとは思うのだが、もちろん、企業としての経営戦略があってのことだろうし、関係業界の支持があったからこそ10数年にわたって実施されたのだろう。

農水省からも卸売市場室長と花き産業振興室長の二人が協力しており、卸売市場法改正など生鮮流通の転換期にあたって、方向性を摸索する業界の思いに応えた企画として評価されるだろう。

フォーラムはそれぞれ興味深かったが、三和陸運の井上博保氏による、ドライバー不足の現状と働き方改革によるコスト負担の話が印象に残った。

井上氏は、最初と最後の1マイル輸送にコスト、労働時間がかかりすぎる課題の解決として次の提案を行った。

  1. 最初の1マイル輸送は依頼主がやっている宅配便方式で、農協生産者と協力した共同出荷場の設置
  2. ラスト1マイルの改善に各地域の荷物をまとめて下ろす物流拠点の設置

物流改善には、この二点の不可欠であると協力を訴えた解題は、部分的には取り組まれているが、運送業界と産地・市場側の共通課題としての取組は弱い。

改正市場法の示す市場機能の重点課題が物流であり、サプライチェーンの根幹は、配送とピッキングやパッケージ等の加工・温度管理施設であり、それらをつなぐ情報・IT機能である。

これらは個々に依頼されて取り組むものではなく、生産から消費までのサプライチェーンを一体的な機能としてマネジメント(経営)することではないか、それに卸売市場としてどう取り組めるのか、井上氏の話を聞きながらそんなことを思った。

もう一つ、日本総研の石田健太氏は、食品宅配市場の状況を説明し、IT技術を活用したプラットフォーマーが市場を牽引している状況を説明した。

そして、これらのデジタルプラットフォーム企業の利益の役90%が手数料収入であると指摘、食材の仕入れは別途他社に依頼している現状を説明し、この食材仕入れ部分を占める業界がプラットフォームに進出する「卸売企業×デジタルプラットフォームによるビジネス創出例」を提起した。

生鮮は商品が複雑で業界で取り組むことは難しいのではないかという意見も出たが、井上氏の提起とも関連するが、運送業界やIT業界と連携した取組は実現できるのではないか、生鮮流通業界活性化のための大きなツールの一つになるのではないだろうか。