卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

開設者の公共性と業者の効率性

改正市場法によって、市場業者に対する基本的な取引規制廃止(規制する自由も含めた)は明確になり、一方では公設市場の開設地方自治体の公共性維持も求められている。
改正市場法では規制廃止と公共性の維持、言い換えれば、市場業者と開設者の経営責任を分けて考えることが必要である。

今まで、大きな流れとしては公設市場の民営化が進められ、とりわけ公設地方市場の民営化が相次いだ。
しかし、公設市場から民営化した市場で、完全に行政の手を離れ民営市場となったケースは少ない。
土地・施設を買い取って民間の開設会社として健全経営を維持することは難しいからである。

改正市場法の大きな特徴の一つであるが、民間施設も中央市場として申請することが出来るとする方針も今のところ全農や大手流通企業が中央市場に名乗りをあげるという話しは出ていない。
農水省食品流通局の武田・卸売市場室長も全中協や国会等で通常の民間企業が卸売市場を開設することは難しいと述べている。

取引の相手方を差別せず方法、結果を公開することは民間企業では考えられず、民間企業が卸売市場を開設するメリットは少ないだろうし、現在、配送センター等の施設を有している民間企業が開設者として従来にない義務を抱えることは選択しないだろう。

しかし、この公共性はあくまで開設者に対する義務であって、市場業者に対する義務ではない。
そうであれば、現在の市場卸として参入し、市場全体を実質的な自社の配送センターとして活用すればいい、結果的に現在の市場は大手企業に私物化されるのではないか、こうした考え方は可能性としてあるのだろうか。

私は、この見方は無理があると思う。
市場が青果、水産、花の単一市場で、卸は一社、仲卸も買参人もほとんどいない、そうした市場ならこうした方向も可能だが、こうした市場は少ないだろう。現実には無理である。

一社で市場を運営するメリットは開設者としてはあまりない。卸として市場に参入し、そこで開設者としての立場も兼務し、卸と開設者の相乗効果を図ることが出来るのは市場外の民間企業には難しいと思う。

公設市場の最大の優位性は行政資産である用地、施設を使って利益を上げるいわば不動産事業としての可能性であり、その優位性を市場業者としてどう活かすかである。

改正市場法下の市場のあり方は、市場業者の取引と開設者のあり方をリンクした市場機能として考えるべきではないだろうか。
次回以降、行政負担と業界負担の問題を通して、存続可能な市場会計の健全性をどう実現するかを検証する。