卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

業務規程・申請書をめぐる課題-その3

8月17日、24日に自民党農林部会、水産部会が相次いで行われ、基本方針、政省令についての与党内での説明・調整が終わった。

8月30日から一ヶ月間の「パブリックコメント期間」《行政の政策方針決定に際して行われる、国民に対して公(パブリック)に、意見(コメント)を求める期間》を経て、最終的に「食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会」で答申されるのは10月に入ってからになるだろう。

既存の卸売市場も民間施設も、卸売市場の認定を受けるには業務規程等を添付した申請書を提出しなければならない。

改正市場法は、第4条2項において、「(中央卸売市場は)以下の事項を記載した申請書を農水大臣に提出して認定の申請をしなければならない」と規定している。

地方卸売市場についても法第13条2項に同じ8項目を規定している。

  1. 開設者の名称、住所、代表者の氏名
  2. 卸売市場の名称
  3. 卸売市場の位置、面積、施設に関する事項
  4. 卸売市場の取扱品目、取扱品目ごとの取扱数量・金額に関する事項
  5. 卸売市場の業務の運営体制に関する事項
  6. 卸売市場の業務の運営に必要な資金の確保に関する事項
  7. 卸売市場の卸売業者に関する事項
  8. その他農林水産省令で定める事項

申請書に記載すべき事項として規定されているのは以上の8項目である。
それほど難しい事項はないようにも思えるが、許可制から認定制に移行し、民間施設も中央卸売市場として認定を受けることが出来ることから、この8項目の要件についても様々な検討課題が出ている。

1)認定の申請書は様式に従って作成するとともに、卸売市場の施設の配置図等の書類を添付しなければならない。その他の申請書の記載事項として「卸売業者以外の取引参加者その他の関係事業者に関する事項」を定める(省令第2条)。

この申請書の様式は、中央卸売市場の場合は農水省が、地方卸売市場は各都道府県が定めることになっているが、開設自治体として独自の申請書様式を定めてもいいし、条例でなくとも通知等で市場開設者に提出を求める実務的な書類でもいい。

条例で対応すると変更等も議会の承認を得なければならないので、県が直接開設している自治体以外は、条例とはしないとみられている。

2)開設者としての取引参加者に共通ルールなど遵守事項を守るために、民営市場であっても卸売部門と開設部門を分離しなければならない。開設者の組織については、自治体以外は法人でなければならないが、民営市場の場合は別法人でなくとも卸売会社の管理・総務部内に、例えば「開設事業部」といった体制上分離された別組織を置けばいい。

3)施設規模の基準は中央市場の場合は市場用地ではなく卸売場と仲卸売場及び倉庫の面積合計が次のように定められている。
青果、水産物:10,000㎡
肉類、花き、その他:1,500㎡

地方市場の場合は、施設規模など省令第2条の事項を省楽することが出来るとされており、市場用地、施設規模ともに申請書に書く必要はない。
従って、現在の許認可制の下で要件とされている卸売場の面積等の基準はなく、狭くとも認定申請は出来る。
また開設者や卸売業者の定款や事業報告書も省略することができる。
 
4)取扱品目については部類ごとの認定ではなく、市場としての取扱品目なので、卸売業者の段階では、市場として取り扱う品目は何を取り扱っても良い。
ただし、取扱品目とすると、取引条件等の共通ルールの公開が義務つけられる。

5)関連事業者についての条文は全て廃止されているので、業務規程で従来の関連業種ごとの店舗数の規定は必要ない。
基本方針で「卸売市場の機能を一層有効に発揮できるよう、卸売市場の内外において関連施設の整備に取り組む」とされており、開設者の判断で市場機能に必要な関連業者と契約し施設を貸与することができる。

6)開設者としての市場業務運営に必要な資金の確保については、公設市場は「公設」であること自体が証明となるが、民営市場の場合は開設者としての資金確保について申請書に記述しなければならない。