東京築地魚市場大物業会の第30回定時総会を取材した。
2018年10月11日の豊洲開場後は「東京豊洲市場大物業会」となるので、この業会名を使うのも最後の総会となる。
大物業会は、築地市場で常に「おおもの」という呼称にふさわしいキングの座を占め続けている。
築地の扱い業種は、マグロ、エビ、サケが三大魚種と言われてきたが、エビ、サケが商社等の市場外流通が主となり、今はマグロのみとなったが、それでもマグロは、今も店舗数、売上ともに三分の一を占めている。
ちなみに平成25年度の築地市場の魚種別取扱額を平成10年対比で見ると次のとおりになる。
- マグロ類 64%
- 鮮魚 90%
- 特種物 70%
- 冷凍 73%
- 塩干加工 69%
全体の平均は72%だから市場全体の取扱高は大きく減っているのだが、それでもマグロの減少幅は大きい。もっともこの統計自体は不正確で、マグロも生鮮、冷凍、それに四つ割りの加工品と分かれる。
45,000本を超す解体場利用や超低温冷蔵庫の満室状態等を反映して業会としての収支は黒字を続けているが、それでも組合員数の漸減が続いており厳しい状況だが、やはり豊洲市場の成否を握るキーマンとしての位置を大物業会が握っていることは明らかである。
先だって大物業会前会長である伴氏の「太海富里加工センター」を見せて頂く機会があり、いっそうその感を強くした。太海は早くから顧客に合わせた商品開発を行っており、量販店のPOSデータでも売れ行き上位の常連で、商品管理に対する姿勢は厳密である。
正直、冷凍マグロの品質管理はそれほど難しくないと思っていたのだが、消費者に旨いと思ってもらえるマグロの商品化は一本、一本の原料の見極めから解凍の温度、水質、水温まで細かく管理されている。
豊洲市場の取引は閉鎖型で温度管理された卸売場での取引となるのだが、マイナス60℃の冷凍マグロをどのように温度管理し柵取り、刺身つくりまで管理出来るのか、細かい対応と目利き機能が豊洲での大物業会の活性化、6街区仲卸ゾーン全体の運営にも影響してくるだろう。
今後の仲卸機能の主要な機能は配送と加工だと早くから指摘されているが、目利き機能を活かした商品開発・アイテム提案等が求められている。
地域スーパー等ではバックヤードを設置しない店も増えている。
その対応は個々の仲卸がやっているのだが、今後こうした需要はカット野菜等と同じく増え続けることは確実であり、市場機能として対応が必要になるだろう。
マグロの供給量は資源保護もあって減少が続いており,全国市場では恒常的に不足している。そうしたなかで、かろうじて築地市場はマグロ供給の中核的役割を果たしている。
大物業会が豊洲市場でのマグロ取引を品質管理・加工機能を創出出来るよう卸と協力し市場全体を引っ張っていくことを期待したい。