卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場の課題

開設者が決定的な役割−改正卸売市場法下における市場開設者のあり方

市場活性化への開設者のあり方が模索されている(横浜南部市場) 2020年6月21日に施行される改正卸売市場法は開設者のあり方にどのような変化をもたらすのだろうか。改正卸売市場法の施行は、市場のあり方の変化だけでなく、開設者のあり方、役割をも劇的に…

種苗法改正案は見送り−コロナウイルスと食料安保2

「知床晩鐘」三上市太郎・撮影 種苗法改正案の見送り理由について 黒川東京検事長の賭けマージャン問題など騒然とする中で2020年5月20日、突然、自民党森山国対委員長が国会に上程されていた種苗法の今国会成立の見送りを発表した。 種苗法については、いろ…

国会上程された種苗法改定案−コロナウイルスと食料安保1

種苗法の何が問題なのか 新型コロナウイルスの対応に追われている今国会に、日本の食料安全保障に大きな影響を及ぼす種苗法の改訂案が上程されている。 この改訂案はイチゴ等の優良品種の海外流出を防ぐことが法目的とされているが、同時に品種の育成者権を…

【寄稿】緊急事態だからこそ取り組める−卸売市場でドライブスル-販売を活用しよう

2020年4月25日N H Kで放映された高崎市場のドライブスルー販売 先に紹介した卸売市場におけるドライブスルー販売は各地市場に広がりつつある。 4月25日に実施した高崎市場の「関越冷蔵」米桝 秀二専務がまとめた高崎市場の取り組みと呼びかけを紹介する。 …

卸売市場のドライブスルー販売広がる

高崎市場のドライブスルー販売(2020年4月26日付け上毛新聞) 卸売市場のドライブスルー販売方式が広がっている。 明石市場、川崎南部市場、高崎市場などで始まり全国的に広まりつつある。 いずれも公設地方市場で、外出自粛で売上が急減している卸売市場業…

開設者が決定的な役割−改正卸売市場法下における市場開設者のあり方

市場活性化への開設者のあり方が模索されている(横浜南部市場) 2020年6月21日に施行される改正卸売市場法は開設者のあり方にどのような変化をもたらすのだろうか。改正卸売市場法の施行は、市場のあり方の変化だけでなく、開設者のあり方、役割をも劇的に…

コロナ感染者発生時の対応

下のチラシは農水省ホームページに掲載されている新型コロナウイルス感染予防対策についての概要である。 プリントして掲示するなど活用されている。 また新型コロナウイルス感染症による企業への経営支援策も発表されている。 支援内容は、金融支援措置、雇…

市場業者への支援も緊急課題

2020年3月18日午前11時 築地場外市場 卸売市場認定申請は2020年6月21日まで後3ヶ月となったが、新型ウイルス騒然の中で卸売市場業者は、新型ウイルスへの対応に加えて急激な売り上げ低迷に追い込まれている。 様々な「自粛」で外食店やホテル、観光、交通…

開設と業務の分離−京都方式か東京方式か

地再整備を行なっている京都中央市場第一市場 開設自治体の条例で対極をなすのが京都と東京である。別表を見るだけで明らかだろう。 各々の業務規程は、改正市場法後の卸売市場のあり方、とりわけ行政が責任を持つ公設市場の開設者としてどうあるべきかとい…

「市場の常識を疑う」櫻田光雄 沼津中央青果社長講演

櫻田光雄 沼津中央青果社長(全国青果卸売市場協会 副会長) 「改正市場法時代をどう生き抜くか」をテーマに行われた、全国青果卸売市場協会と全国魚卸売市場連合会の合同研修会における櫻田光雄 沼津中央青果社長の講演を紹介する。 近年、市場業界育ちでは…

小池知事は忙しい

市場は中小企業の集合体である。しかも顧客は小売店や外食、つまり消費者に繋がる。何より票が欲しい政治家にとって一か所で数万の票が動く卸売市場は魅力があるのだろう。 そのせいかどうかは分からないが、選挙の年になる小池知事は、2020年に入って1月5…

物流改善がカギ−合理化検討会

仙台市場青果部の共同配送施設 青果と水産における食品流通の鍵を握るのが第一次産業です。そうした意味でも、昨日紹介した小田原漁況と小田原水産地方卸売市場のコラボは意義のある取り組みです。 青果はTPPや日米FTAの流れで試練に立たされていますが、水…

「賑わいゾーン」は市場機能か

2019年9月20日オープンのブランチ横浜南部市場 消費者開放はイベントなのか、あるいは市場機能の一つなのだろうか。 卸売市場の中に消費者の一般開放施設を設置する動きが広がっている。初めは関連店舗の不振を打開するためで、次に仲卸も参加し、卸も商品供…

水産資源から見た市場流通

豊洲市場で行われた東京水産振興会主催の講演会「水産資源の現状とこれからの豊洲市場流通について」を聞いた。 講師の和田時夫・漁業情報サービスセンター会長と、婁小波・東京海洋大教授は、お二人ともに水産資源の問題に詳しい研究者である。 豊洲市場の…

改正法の試金石となる東京市場

東京都の条例改正案が2019年11月28日に開かれた取引業務運営協議会で答申され、11月5日の市場審議会の了承を経て12月都議会に上程される。 すでに京都市が上程されていて、今後、中央市場を開設する自治体で来年6月までの卸売市場申請に向けて条例策定が進…

全魚と全青協が事務所統合

活発な活動を続けている全青協(大阪大会) 改正市場法の施行に備えて、全国魚卸売市場連合会(全魚卸)はこのほど事務所を東京秋葉原にある全国青果卸売市場協会(全青協)の事務所に移転し、富山武夫・全青協理事が全魚専務も兼任し、事務局体制を統合した…

水産仲卸の記者会見

2019年10月17日、仲卸組合の団体である全国水産物卸組合連合会(全水卸組連)の正副会長など10人の幹部による記者会見が豊洲市場の東卸組合会議室で開かれた。 総会ではなく、臨時に全国の幹部が揃って記者会見を開くことは珍しく、特別な発表でもあるのか…

手数料業者からの脱却

全国青果中央市場の取引は、野菜の64%が委託によって集荷されているが、販売は相対取引が91.6%であり、セリ・入札はわずか8.4%である。 委託集荷したが、産地の指値は1000円なのに、せりで800円しか出なかった。「そういう場合もある」ならば、…

集荷対策費の解決策

集荷対策費の解決策はあるのだろうか。 実務的な解決は簡単である。受託から買い付けにすれば1000円で仕入れた青果物を800円で売ろうが700円で売ろうが違法ではない。あるいは特別出荷奨励金ということでも処理できないことはない。しかし売れば売…

人材活用による市場活性化

川越市場の直売所「生鮮漁港川越」での週末イベント「まぐろ解体ショー」 卸売市場の仲卸売場では毎日見ることができる風景ですが、さすがに市場です。解体している人も「大者」でしたが、この日のまぐろも107キロの大物です。 まぐろ解体ショーは市場まつり…

集荷対策費とは何か

「集荷対策費」とは何か。業界関係者にとっては周知のことだが、念のために説明する。 産地は委託で出荷する青果物に対し「この価格で売ってくれ」という希望価格を出し、卸は希望価格通りに売れないと、差額分を負担しなければならない。強制ではないが明日…

「卸は手数料業者」は幻想である

名古屋セントライ青果が産地に支払っていた「集荷対策費」に対し、名古屋国税局が「贈与」であると認定し4年間の累計で7億3千万円の追徴課税を行った。市場法改正よりも大きな青果市場の大問題となっている。 青果市場の卸にとって、実際の売値よりも高い…

変化に対応する卸売市場のあり方

武田裕紀 農林水産省 食料産業局食品流通課 卸売市場室長 2019年8月21日〜23日の三日間、東京豊洲のNTTデータ本社において「全国生鮮流通フォーラム」(パーソナル情報システム、NTTデータ関西主催)が開かれた。以下、講演者の講演概要を順次紹介する。 人…

生き残りをかける地方卸売市場−改正市場法の下で何を目指すか

2020年6月に施行される改正卸売市場法によって地方卸売市場は最も大きな影響を受けるだろう。青果、水産物を中心とする生鮮食品流通は、千を超す卸売市場によって網羅されている。その卸売市場は64中央市場と1060地方市場に分かれており、市場数では全体の…

「消費者開放」は上から目線?

岡山中央市場の関連売場。営業時間をすぎていたため店はしまっているが、市場では数少ない関連売場の成功事例である 卸売市場の消費者開放は、民営市場だけでなく多くの公設卸売市場で行われている。 「消費者開放」は「本来は売らないのだが特別に売る」と…

商社と卸売市場

汚い市場のイメージは一掃された。後はハードにふさわしい中身である(豊洲市場) 主 要 な 株 主(2019年6月) 東都水産 (株)山陽 12.1% ヨンキュウ 9.8% 松岡冷蔵 7.8% マルハニチロ 6.4% 築地魚市場 ベニレイ 11.6 % ヨンキュウ 9.8% 東洋…

卸と仲卸、買参人の垣根廃止−東京都 業務許可から施設契約に

改正市場法は、従来の取引規制条文をほとんど削除していますが、業務規程は各市場の判断で策定することができることになっています。中央市場の中には京都のように現行の業務規程を変更せず、そのままにしようという動きもありますが、各地の中央市場では、…

役所の会議は退屈だ

東京都は2019年7月4日、第23回取引業務運営協議会を開き、「卸売市場法改正を踏まえた条例改正について」報告されました。 昨年12月から4回にわたって、都職員を入れると業界幹部、外部委員含めて50人近くが論議した結果がこれかと驚くほどの内容で、内容…

改正市場法とお経

2019年6月6日に開かれた生鮮取引電子化推進協議会総会での武田卸売市場室長の講演を聞きました。ITに疎い私でも分かりやすく、大変面白く聞きました。 「食品流通の情報化、市場のIT化は進んでいない、遅れている。」いつ頃から言われてきたでしょう、誰も…

「卸売市場」は「弱者・弱肉」なのか

卸売市場数は平成28年度末で1124市場ある。 そのうち、中央市場は64、地方市場は1060と圧倒的に地方市場が多い。地方市場のうち行政が解説する公設市場は151、準公設(第3セクたー)市場は21である。 この数字が、2020年6月に施行される…