卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸売市場の命運にぎる物流-その2

来る人のための物流から届けるための物流施設を

生鮮食料品における市場流通は、国の参考図にもよく出ているように産地から卸売場へ運び、そこから仲卸・買参人に販売し、仲卸・買参人は卸売場からの商品の移動は全て責任を持つ。
施設整備は全てこの流れを基本にして施設整備がなされる。

卸が仲卸売場に、また仲卸が買参人の車まで運ぶのはあくまでサービスであって、取引は卸売場、仲卸売場で完了し、モノの所有権はその時点で移転する。

従来の卸売市場法が想定している物流は、産地から運ばれてくる集荷の円滑な受けと、買い出しに来る買受人の車両スペースの確保である。

卸が転配送するスペース、仲卸が配送するためのスペースは極めて不十分である。
売上は増えないのに配送スペースは足りないのが全国卸売市場に共通する現象である。

改正卸売市場法では削除されたが、卸売市場として認可を受ける要件の一つに「駐車場」がある。

これは買い出しに来る人たちのための駐車スペースであって、量販店の許可条件の一つがピーク時の顧客の台数が駐車できるスペースであるのと同じ発想である。

近年は福岡新青果市場など中央市場でも物流(SCM)を基本にした施設整備が行われたが、全国的にはこれからの課題になっている。

市場施設の物流は、来る人のための物流であって、市場から出るための物流が主体になっていないことが各地市場の最大の問題になっているのである。

この問題意識に基づいて提起されたのが改正卸売市場法によって規定された施設整備への支援であり、流通の効率化(物流)、品質・衛生管理の高度化(温度管理施設)、情報通信技術の利用(IT化)、国内外の需要への対応(輸出)の、4つの機能を中心に施設整備を行う卸売市場に対して支援すると定めた。

卸売市場の、この四つの機能の中で、中心となる機能は物流である。
卸売場の品質・衛生管理は、市場から出る物流機能の一環として機能するサプライチェーンマネージメント(SCM)であり、SCMを構築しない限り、品質・衛生管理には直接的な付加価値はつかない。採算を支えるコスト負担は重くなるばかりである。
品質・衛生管理と情報を備えて、初めて市場の物流は、機能としての物流となる。
そして、品質・衛生管理だけでなくIT・システム化は、商品管理や安定供給を図るSCM構築には欠かせない要件である。輸出機能もまた同じである。

こうした問題意識に基づいて提起された施設整備は、配送施設の整備ではなく、ハード面におけるSCM構築の一環としての物流機能のための施設整備である。