卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

太ったソクラテスでなにが悪い

前にも紹介しましたが、肉食禁止時代に猪を山鯨、鹿をモミジ、馬肉をサクラ、鶏肉をカシワと言ったのも言葉の遊びです。
しかし豚はせいぜい「トン」と音読みするだけで言葉の遊びがありません、豚はそのまんま豚です。これは不当な差別ではないでしょうか。

この差別待遇は洋の東西を問わないようで、「太った豚となるよりも、やせたソクラテスたれ」は経済学者スチュアートミルの有名な言葉です。
太ったソクラテスでなにが悪い。

豚に真珠、豚やろうなど、どうも豚のイメージは悪い。
私は子供の頃、柿泥棒をやって「お前らブタ箱に入れるぞ」と怒られ震え上がりました。
近所に養豚場があって、臭いと鳴き声が嫌で近寄らなかったのですが、豚と一緒に閉じ込められるのか、食事は豚と一緒に食べるのかと、たまらず泣き出しました。
私が清く正しい人生を送ることが出来たのは柿泥棒をしたおかげです。 

長崎の知人がやっている五島列島の民宿に泊まり、島々の美しい夜景と釣りを堪能しましたが、「美味い肉が手に入った」と言われ、裏山のワナにかかって檻で暴れているイノシシを見ました。

「いいでしょう」と自慢されたのですが固辞して、禁漁期間中の伊勢エビを「一匹や二匹は大丈夫」と素潜りで採ってもらい、ご馳走になりました。
びっくりするほど濃厚な香りと味がしました。アジやサバ、クロダイ、サザエ、アワビ等の貝類も上物ばかりです。なんで、五島列島でイノシシを食わなきゃならんのか。

食料自給率の低下が問題になったとき、牛肉1㌔に必要な飼料は8㌔だが、豚肉1㌔を生産するには3㌔でいい、鶏肉だと忘れましたがもっと少ない、だから地球の飢餓問題を解決するには牛肉よりも豚肉、豚肉よりも鶏肉を食べるほうがいいのだろうか、それなら国民全員がベジタリアンになればいい、と何の役にも立たない「へりくつ」ばかりが浮かびました。

今年も天候不順で野菜も果物も魚までも供給不足となっています。
太った豚どころか、やせたサンマも手に入りにくくなってしまいました。