卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

新卸売市場法のキーワードは物流-「入る物流」から「出る物流」へ

新卸売市場法の法的な整備が着々と進んでおり、現在、全国で農水省の説明会が再び行われている。
「再び」ではない、3回目か4回目になるだろう。

業界幹部や学識経験者を集めた従来の委員会方式から、直接、法律を作っている部門が業界に意見聴取や説明を行う方式に変わったことによるもので、軽減税率問題でも財務省の担当者が各地に出向いて説明しているし、業界団体の勉強会等にも細かく対応している。

法律を作っている部門が、幹部だけでなく業界関係者に広く説明し、意見を聞くという方式は、役所の担当者は大変だが、いいと思う。
法律は成立することよりもスムーズに施行するほうが重要である。

私も何回か説明会を聞いた。
感想はいろいろあるが、施設整備の中心課題は物流を中心とした施設整備だろうと、改めて感じた。

繰り返し説明されているように、今後の市場施設整備は、物流と温度管理、情報、輸出の4つが柱となった合理化計画に対し、国は支援することになっている。

輸出は、財政的には成田新市場が重点的な支出になるだろう。
温度管理やシステム管理は、物流に付随する課題である。

物流が中心であると改めて言わなくとも、物流は卸売市場が現在行っている主要な業務である。

ただし、従来の卸売市場法が想定している物流は、産地から運ばれてくる集荷の円滑な受けと、買い出しに来る買受人の車両スペースの確保である。

新卸売市場法で規定が無くなった卸売市場の要件の一つに「駐車場」があるが、これは買い出しに来る人たちのための駐車スペースであって、量販店の許可条件の一つがピーク時の顧客の台数が駐車できるスペースであるのと同じ発想である。

しかし、卸が転配送するスペース、仲卸が配送する車両スペースがない。
この弱点は豊洲市場でも十分には解決していない。

市場施設の物流は、来る人のための物流であって、市場から出るための物流が主体になっていないことが最大の問題になっているのである。

この問題意識に基づいて提起されたのが新卸売市場法の4つの機能である。

そのカギが卸売場であることは当然だろう。

現在、卸売場の低温化が進んでいるのは、品質・衛生管理が主要な目的なのだが、これだけではコストに見合う利益が出てこないだろう。

卸売場の品質・衛生管理は、市場から出る物流機能の一環として機能するサプライチェーンマネージメント(SCM)であり、SCMを構築しない限り、コストは増えるばかりである。

その利益を上げることが出来る市場施設として4つの機能があげられ、それはSCM機能に直結する。

例えば品質・衛生管理だけでなくIT・システム化もSCM構築には欠かせない要件である。

品質・衛生管理と情報を備えて、初めて市場の物流は、機能としての物流となる。

輸出は、市場機能の上に付いている「グリコのおまけ」である。
なくてもいいけど、あったほうが喜ばれる。