卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

2018-01-01から1年間の記事一覧

豊洲市場の果たす役割と今後の展開-青果部を主とした検証

改正市場法によって卸売市場はどのように変わるのだろうか。 改正市場法の方針が市場施設面でどのように変化するかを、平成30年10月11日に開場する豊洲市場を通して検証する。(「農産物流通技術2018」より一部改稿) 1.築地市場の特徴と機能 築地市場の開…

パーソナル情報システム(株)PJS第29回全国生鮮フォーラム

2018年8月28日から30日の三日間、東京築地のJJK会館で開かれたパーソナル情報システム(株)(PJS)の第29回 全国生鮮フォーラムを取材した。 毎年2回、多彩な講師を招き無料で行われていて今回で29回を数えるフォーラムである。それにしても今回は、主催者…

美しい音と美しい味

先日、鎌倉芸術館でミーシャ・マイスキーのリサイタルを聴いた。 マイスキーのバッハ無伴奏チェロ組曲はiTunesに入っていてよく聴くのだが、数十年前、府中の森芸術劇場で初めてマイスキーを聞いて以来の生演奏はまた格別である。 今回は娘のリリー・マイス…

業務規程・申請書をめぐる課題-その3

8月17日、24日に自民党農林部会、水産部会が相次いで行われ、基本方針、政省令についての与党内での説明・調整が終わった。 8月30日から一ヶ月間の「パブリックコメント期間」《行政の政策方針決定に際して行われる、国民に対して公(パブリック)に、意見…

高齢化社会と人口増

若いころ、高齢の方から「何歳にみえる?」と聞かれて困った経験があります。 当時は、50歳以上は皆「年寄り」で一括りでしたから「関心ないし分かりません」と答えるわけにもいかず、いくつと言えば喜んでもらえるか真剣に考えたことを覚えています。 今、…

業務規程・申請書をめぐる課題-その2

開設者の懸念 改正市場法が19条となったことに象徴されているように、卸売市場の管理運営に対する行政関与は明らかに減っている。行政関与が減っていることは明らかだが、問題は行政関与の減少と公共性の減少は必ずしもイコールではないことである。改正市場…

人はフードで生きるに非ず、システムで生きる

長崎出身のせいか私は路面電車が好きです。路面電車はいつ見ても、どの街で見ても好ましい姿をしています。 長崎は坂の町ですので歩くのが大変で、若い頃、もう少し延ばして欲しいと思っていましたが、最近知ったのですが少し勾配がきついと動けないそうです…

伊勢崎市場、無償契約3年間延長

公設から民営化した(株)伊勢崎地方卸売市場(群馬県伊勢崎市日乃出町702)は、6月の伊勢崎市議会で無償賃貸借契約を3年間延長の要請を行い採択された。 平成34年6月末まで現在の開設会社が経営する。 伊勢崎市場は昭和57年に伊勢崎市公設地方卸売市場…

業務規程・申請書をめぐる課題-その1

改正市場法が成立し、2020年の施行に向けた準備が進んでいる。 9月以降に予定されている農水大臣が定める基本方針と政省令を踏まえ、2020年6月の改正卸売市場法の施行日に向けた都道府県の条例、市場業務規程と申請書の作成準備に入る。 以下、総…

真夏の夜の独り言

科学的な話をしよう。男性が小便をするときに体が少し震えるのは男性ならば誰もが覚えがあるだろう。しかし、女性はそうしたことがないと70歳を超して初めて知った。 なぜ違うのか。TVでゲストの医者が「男性に比べて女性は用を足すときに空気中にさらす肌…

大阪府中央市場指定管理者、1億円の利益と活性化事業

2018年7月29日付け、指定管理者「大阪府中央卸売市場管理センター(株)の1億円の利益確保」に続く市場活性化事業の取り組みである。 一年間の主要な活性化事業 トイレ改修を第1期に続き重点事業として取り組み、29年度は未改修であった6か所の改修を終…

小池知事の安全宣言

7月31日、前日に豊洲市場で行われた専門家会議の報告を受けて、小池都知事は豊洲市場の安全宣言を出した。 安全宣言は、かねてから業界が都知事に対し要請していたことだが、これは前日に豊洲市場で開かれた専門家会議(平田健正・座長)の取材陣に対する説…

大阪府中央市場指定管理者、1億円の利益確保

改正市場法では行政関与の減少と開設自治体による公共性、市場会計の健全性が求められている。 大阪府中央卸売市場が全国に先駆けて導入した指定管理者制度は、行政と業界の連携、効率性と公益性の両立を安定して維持しており、改正市場法の下での公設市場の…

築地大物業会を取材して

東京築地魚市場大物業会の第30回定時総会を取材した。 2018年10月11日の豊洲開場後は「東京豊洲市場大物業会」となるので、この業会名を使うのも最後の総会となる。大物業会は、築地市場で常に「おおもの」という呼称にふさわしいキングの座を占め続けている…

トータル物流の時代

市場流通の世界では、水産と青果、花を1社で扱う運送業者は少ない。それは法的に規制されていたからではなく、商品特性から一緒には取り扱えないという考え方で、サプライチェーンは別個につくられていたからである。 ところが築地市場にある「永井運送」は…

豊洲市場9月13日に開場記念式典

小池知事が出席した「市場移転に関する関係局長会議」で、豊洲市場の開場に向けた取組状況、環状2号線の整備、築地再開発の検討状況、の三点について次のように決定した。 ①10月11日開場に向けた記念式典は9月13日に行われる。 開場は豊洲市場になる見込み…

一般会計操出基準

改正市場法の根幹は原則規制から原則自由に転換したことである。 そのこと自体は問題ないのだが、自由と自己責任はセットである。 言い換えれば公設市場における市場会計のあり方であり、行政責任分と業界責任分の考え方の問題である。 市場会計において行政…

市場会計の健全性

6月14日の参院農林水産委員会において、卸売市場法と食品流通構造改善促進法改正案を付帯決議付きで採択し、翌15日の参院本会議で可決成立した。 付帯決議は法律の重要な変更の際によく出されるもので、今回の改正法は、民間も中央市場開設が認められること…

公設市場が認定申請できない?

先だってある市場開設自治体の職員から「中央市場であっても卸売市場の認定申請書を出せないかもしれない」という衝撃的な話しを聞いた。 どういうことなのか。「開設区域の廃止や商物分離など取引規制の廃止によって開設自治体が税金を投入する根拠がなくな…

開設者の公共性と業者の効率性

改正市場法によって、市場業者に対する基本的な取引規制廃止(規制する自由も含めた)は明確になり、一方では公設市場の開設地方自治体の公共性維持も求められている。改正市場法では規制廃止と公共性の維持、言い換えれば、市場業者と開設者の経営責任を分…

立体化市場の立体活用

京都南部市場、大阪鶴見フラワーセンター、神戸本場を回りました。ついでに京都駅に途中下車し嵐山から広隆寺の弥勒菩薩を見て、丸に十の字の島津製作所の前を通って嵐電で帰ってきました。 先だって、久しぶりにTVでノーベル賞受賞者の田中耕一先生を見て…

開設区域と商圏

中央市場の開設は、実態としては各自治体が計画し国が認めるという手順なのだが、法的には農水大臣が全国的な整備計画に従って開設区域を定め許可する手続きであり、卸売市場法の最も重要な開設要件である。 この「開設区域」という概念は、中央市場の配置と…

歴史的経緯と公共性

改正市場法に関する国の説明会で、都民ファーストの小島敏郎顧問が質問した中央市場の開設要件である開設区域が廃止されたことによる開設自治体の公的共責任、公共性の問題は重要な問題である。 ある自治体で、開設区域を越えて自由に商売している市場業者に…

改正市場法と公共性

今までの国の説明会で明らかになった改正市場法における公共性に係る部分は概要次のとおりである。 許認可制から認定制に移行することで行政関与は明らかに後退する。 市場外施設も支援対象となり、卸売市場に帯する財政支援は広く薄くなる可能性が高い。 開…

開設者の属性と行為の公共性

卸売市場の公共性の根拠については、社会的インフラとして整備され機能している点が公共性であるという理解が一般的だと思います。しかし卸売市場は食品の唯一の社会的インフラではありません。「食料品の安定供給による国民生活への貢献」という卸売市場法…

国の関与と公共性

3月末に行われた日本農業市場学会公開特別研究会「卸売市場の現在と未来を考えるー流通機能と公共性の観点からー」を聞きました。公共性の視点から改正市場法を評価、論議するという興味深いテーマです。 報告者は3人で、広島市場の再整備に取り組んでいる…

筑地市場とHACCP

HACCPの義務化まで2年を切り、業界でも慌ただしい動きが出ています。厚労省基準AとBは取扱規模によって決まる可能性があったことから、取り扱いが大きい市場卸は基準Aとなり、厳しいCodex基準が義務つけられると言われていました。 しかし、市場業者は製…

卸・仲卸の垣根

改正市場法によって、卸と仲卸の垣根は無くなりますが、この垣根は、正確に言えば改正市場法によって無くなったのではありません。現行市場法が、受託と買付、せりと相対をフリーにし、手数料率の自由化を導入した時点で無くなったのです。卸と仲卸の垣根は…

改正市場法と卸・仲卸

仲卸と卸の関わり方は、確かに仲卸の立場からするとメリットよりもデメリットの方が多いと思います。 もともと卸売市場法における仲卸の位置付けは売買参加者と同じで、仲卸は市場内に施設を持つ販売業者というだけの違いです。「市場取扱高」はイコール卸の…

改正市場法と施設整備

農水省は3月12日の全国説明会を皮切りに4月24日まで全国10か所で改正市場法についての説明会を開いています。 昨年12月から繰り返し説明会を開いていて、その内容は参加者にとって必ずしも満足のいく答えではなかったのですが、やること自体は悪いことでは…