改正市場法に関する国の説明会で、都民ファーストの小島敏郎顧問が質問した中央市場の開設要件である開設区域が廃止されたことによる開設自治体の公的共責任、公共性の問題は重要な問題である。
ある自治体で、開設区域を越えて自由に商売している市場業者に税金を投入する根拠はどこにあるのか議会で問題となり、市場長から「生鮮食料品の安定供給というだけでは納得してもらえない」と相談された経験がある。もう十年以上前のことだ。
開設区域の規定があった時ですらそうなのだから「開設区域撤廃によって地方自治体が開設する意義がなくなったのではないか」と開設自治体が困惑するのも当然だろう。
改正市場法によって行政関与は明らかに減少するが、それが必ずしも公共性の後退とは言えないことは前にも述べた。
国は「申請時には想定している供給量や、バックデータとして
供給圏をどのように考えているか、主なターゲット地域はどこか等を入れる」と、申請書に主たる供給圏を明示することで開設区域設定の代替とする考えを述べている。
果たして、改正卸売市場法で市場を開設するための地域要件を外したことで、地方自治体が公設市場を開設する法的根拠がなくなったのだろうか。開設区域と商圏はどう違うのだろうか。
もちろん現在開設されている中央卸売市場の存在意義が否定されるものではないし、地方市場にはもともと開設区域の規定がないので、開設区域の廃止と公設市場の廃止とはリンクしない。
ただ、法律の条文を廃止して申請書の中に記述されるだけで、地方自治体が公設市場の意義を納得することは難しいだろう。
現実的には、今後、地方自治体が新たな公設市場を開設することはほとんどないだろうが、問題は今後のことではなく現在の公設市場の開設意義である。
日本農業市場学会でも卸売市場の意義について論議されたが、①米騒動等の社会不安を無くす社会的機能と、②都市経済の発展を支える人口増に備えた食料安保の社会政策的な役割と消費者への安定供給を図る経済機能の、二つの役割を有している。
その二つの役割を果たす社会資産として行政が関与し、公設市場ネットワークを構築した歴史的経緯があり、この経緯そのものが公共性そのものである。
これは、規制改革会議が主張するように「時代遅れ」の一言で片付けられる問題ではない。
しかし、開設区域は実体上ほとんど機能していない。
実体上の役割は、開設区域外の販売を規制するための、やたらと多い例外規定と実務的な手続きである。
そうした面から、開設区域は「合理的ではない」規制の典型でもある。