卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

開設者の属性と行為の公共性

卸売市場の公共性の根拠については、社会的インフラとして整備され機能している点が公共性であるという理解が一般的だと思います。
しかし卸売市場は食品の唯一の社会的インフラではありません。
「食料品の安定供給による国民生活への貢献」という卸売市場法第一条の規定だけで納得させることは、間違いではありませんが難しいと思います。

改正市場法が大幅に行政関与を減少させたことで、私も改正市場法案が発表されたときは、これは国の責任の放棄であり開設自治体への丸投げではないか、と思い、その通りにこの欄でも書きました。

しかし、私が思うほど単純ではないようです。

許認可制から認定制、取引ルールの自由化という法的制度面での行政関与の後退とともに、取引面では全市場に差別的取り扱いの禁止や取引ルール・取引結果の公開を義務化した業務規定が認定の要件となったことで、民間企業からの卸売市場参入は新規には難しくなっています。 

主要品目について決済期日や手数料について事前に公開し、結果も公表するなど民・民の取引では耐えられないでしょう。
そうした面で、行政関与の後退が一方的に公共性の後退とは言えなくなっているのですが、それでも、この改正法だけで公共性は維持されているとは納得しにくいでしょう。

現在行われている改正市場法説明会において、公共性について「開設区域廃止等による行政関与後退によって公共性が後退し自治体の一般会計繰入基準30%も論議の対象となるのではないか」との質問に対し、農水省の宮浦流通課長は次のように答えています。

「一般会計繰入基準は総務省の方針だが、公共性については、民間施設も卸売市場の申請ができることや規制条文が少なくなる点などで行政関与が少なくなるとも言えるが、合理化計画の認定や共通ルールの義務化など公共性は維持されている。開設者の属性は公であっても民であっても問わないが、行為としての公共性は引き続き維持されている。また開設区域はなくなっても地方自治体が卸売市場を開設していることが公共性の証しである」

日本農業市場学会では社会政策と経済政策の二面から公共性が論じられていました。
公共性を歴史的側面から検証する視点は重要ですが、現実の市場制度の公共性の証明には直接結びつきません。
「開設者の属性と行為の公共性」というとらえ方は初めて聞きましたが、なるほどと思いました。

しかし、それでも問題は残ります。
都民ファーストの会の小島敏郎顧問が質問した「中央市場の地域要件」が撤廃された後の自治体一般会計操出の法的根拠です。