卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

JA全農ぐんま青果物一次加工センター、前橋市場と提携

「JA全農ぐんま青果物一次加工センター」は、前橋市の民営地方市場「前橋生鮮食料品総合卸売市場」(前橋市場)の用地内にあり、施設は前橋魚市場の水産仲卸棟をそっくり活用しJA群馬が約3.5億円をかけて改装、商品供給は前橋青果(飯塚伸彦社長)を通し業務も前橋青果子会社に委託しています。

ここまで卸売市場と生産者団体の機能が一体化したケースは全国的にも珍しく、生産者の所得向上と卸売市場法の抜本見直しの方向性を先取りしたケースとして注目されています。

「JA全農ぐんま青果物一次加工センター」の意義

1.サプライチェーンマネジメントめざす

サプライチェーンマネジメント(SCM)は、物流、商品供給ルート(サプライチェーン・SC)だけでなく管理、運営(マネジメント・M)が入って初めて実効性(ロジスティクス・バリューチェーン)が出てきます。

産地と卸売市場の関係は、取引面では最も密接であるにもかかわらず、SCにとどまり、SCM全体に広がってはいません。

誰もが考えつくことですが、そうした取り組みは意外に少ないだけに、JA全農ぐんまの取り組みは卸売市場との共存をめざすテストケースとなると期待されます。

2.この一年の成果

この一年の成果は数値的にはそれほど大きなものではありません。

しかし、めざす方向性は農業競争力強化支援法案と市場法の抜本見直しという新たな時代の先取りであることは明らかですし、成果は小さくとも今後の流れを左右する意義は大きいだろうと思います。

以下、将来性を含めた数値としての成果です。

JA全農ぐんまのメリット

  1. 市場施設の活用で建設や用地取得などの期間スピードアップとコストの効率化
  2. 首都圏での加工、業務用販売拠点とし集荷に有利
  3. 卸を通して年間安定供給が可能
  4. キャベツの芯など産業廃棄物を残渣処理しJAグループの養豚団地の飼料とする

前橋市場のメリット

  1. 青果と水産の協力によって市場全体の市場会計、経営展望に新たな視点と貢献
  2. 前橋青果の売上、経営に貢献
  3. 水産市場の活性化、経営改善に貢献

農業支援法によりJA全農の営業体としての取り組みが推進されていくなかで、前橋のようなケースも増えてくるでしょう。

先進的な取り組みは、最初に民営市場が行うケースが多いと思います。例えば、現在は中央市場を含めて、ほぼ全ての市場で実施されている市場祭り等の地域消費者との交流も、まず民営市場から始まり、第3セクター市場に広がり、それが公設地方市場から中央市場へと広がっていきました。今では卸売市場の果たす役割の大きな柱となっています。

生産者との連携はすでに多くの卸売会社が取り組んでいますが、JA全農等の生産者団体との施設面の連携はあまりありません。

今後、市場内施設と市場外施設がともに補助対象になりますが、まず卸売市場を活用した施設整備が最も容易だろうと思います。そのうえで卸売市場側からの働きかけで市場外での営業展開が可能になってくるだろうと期待されます。

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