卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

コンパクト化・物流機能中心に再整備‐飯塚市公設地方卸売市場

改正卸売市場法時代における市場改革は、物流機能及びEC取引を含めた情報機能強化に集約されるだろう。
現在、多くの卸売市場が直面している施設再整備も、この二つの機能をどう取り入れるか「機能特化市場」が最大の課題である。

改正卸売市場方時代の機能特化市場の典型として、令和4年1月20日に開場した千葉県成田市公設地方卸売市場(成田新市場)を紹介した。
今回は、物流機能に特化した市場再整備を行った福岡県飯塚市公設地方卸売市場(飯塚市公設地方市場・福岡県飯塚市有安958)を紹介する。

1.市場の概要〜大屋根の下に23メートルの中央通路

飯塚市公設地方市場は、令和3年5月に福岡県飯塚市の菰田から庄内工業団地グランド跡地に移転開場した。

飯塚市の地域再開発計画の一環として実現した飯塚市公設地方市場は、施設中央に23メートルの大通路があり、その左右に定温倉庫と常温倉庫、卸売場を配している。動線主体に冷蔵・保管と卸売場を一体化した施設となった。
機能的には福岡新青果市場のコンパクト化とも言えるが、用地28,835㎡、事業費38億円、取扱高70億円の物流機能中心の市場である。

青果部卸「ファーマインド新筑豊青果(株)」(安藤俊浩社長)を訪ね、お話を伺った。

市場概要は以下の通りである。市場用地は狭くなったが、青果部の施設は拡大している。
 ①事業費38億円、国の助成金9億、飯塚市と業界が29億円を負担。
 ②市場用地 28,835㎡
 ③卸売業者、青果部 ファーマインド新筑豊青果(株)
       花き部 (株)飯塚花市場

2.市場施設の特徴

①密閉型卸売市場
青果棟を外壁で囲み、中央を福岡ベジフルスタジアムの中央通路の幅20メートルを上回る幅23メートルの通路があり、その左右にせり場(2区画962㎡)、定温施設(6区画2,169㎡)、常温施設(3区画、1,159㎡)がある。
大屋根の下にある中央通路や軒下を長くすることで積み下ろしに際して濡れることがなくなった。

②場内作業の効率性・機能性向上
買受人倉庫には大部分が冷蔵機能を装備しており、荷降ろしから販売・出荷までの効率性を向上させている。また、せり場にウオールカーテンを設置することで温度管理の徹底を図っている。
また、ブロッコリー製氷機を常設 鮮度を保ったまま出荷、出荷調整も可能にするなど付加価値の拡充にも力を注いでいる。

③防災拠点としての機能
飯塚・筑豊地区の発展を図る飯塚市にとって、大規模災害時の物流と防災機能、生鮮食品の安定供給は大きな意義を有しており。公的な役割を担っている。

3.筑豊地区の経済活性化

今回の飯塚公設地方市場の移転は、飯塚・筑豊地区の経済発展に向けた大きな第一歩と位置づけられている。
移転跡地の菰田地区には、すでにイズミの大型商業施設「ゆめタウン飯塚(仮称)」の2023年7月開業が決まっている。

さらに移転した庄内工業団地は福岡方面に向けた重要な交通インフラである国道201号に面しており、片側1車線であった八木山バイパスは、4車線(片側2車線)となることが2019年に決まり、翌2020年から着工している。

ゆめタウンの開業と八木山バイパスの4車線化は飯塚市の地域経済活性化に大きな役割を果たすことは明確であるが、同時に飯塚公設地方市場にとっても大きなビジネスチャンスを迎えることになるだろう。

4.ファーマインド新筑豊青果のチャレンジ

改正市場法下で大きな変化が起きている市場流通において、従来から大きな注目を集めている企業がファーマインドである。

ファーマインドグループは2020年12月期実績で744億円、バナナから輸入果実、国内青果物へとネットワークを広げ、全国14か所の温度管理された閉鎖型の物流センターを展開している。

卸売市場としては、新筑豊青果の他、広島東部中央市場の青果卸「TOKA」を経営し、東京豊洲市場の「東京シティ青果」の大株主でもある。グループ内にはIT企業「コムレイド」を有し、青果市場向けのITソフトの導入も増えている。
2021年8月には全農と業務提携を結ぶなど、国内青果物の流通にも意欲を強めている。

こうしたファーマインドグループが、九州において新たな流通拠点を構築した意義は大きい。
特に現在、広島東部中央市場も広島中央市場に移転統合することが決まっており「TOKA」は広島中央市場の卸となる。市場に隣接した物流センターとの連携も強化されることになるだろう。

広島中央市場は青果、水産、花き(地方市場)、三部門を持つ24万㎡の、中四国最大の拠点市場である。
公設地方市場、中央市場の卸2社と14の配送センターが今後、どのような経営戦略を展開するのか、改正市場法の下で青果市場流通が変わる流れとなるか、今後も大きな注目を集めていくことになる。

5.飯塚公設地方市場の取材を終えて

動線主体に冷蔵・保管と卸売場を一体化した市場施設の整備は、民設民営の石巻地方市場が先鞭を切り、ついで福岡市中央卸売市場青果市場(ベジフルスタジアム)が大型中央市場としてのモデル市場を実現した。

石巻市場は民営市場としての機能強化、福岡ベジフルスタジアムは広域集散市場として、それぞれ用地に余裕のある市場施設の機能強化として典型市場となった。

飯塚公設地方市場は公設の地方市場としてPFIを導入しなくとも、用地が限定された条件下で市場業者が望む公設の地方市場施設は十分可能であることを実証した。
これは大きな意義を持つことになるだろう。

公設、民設にかかわらず再整備を計画している青果地方市場は今後、石巻、福岡、飯塚の三市場が基本的なモデルケースになるのではないだろうか。

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飯塚市場全景

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市場エントランス

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新筑豊青果 大通路

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新筑豊青果 卸売場全景

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新筑豊定温倉庫