卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

富山公設地方市場再整備−定期借地権で公設市場も民間が建設

f:id:chorakuan:20210420082951j:plain

(参照)富山市 富山市公設地方卸売市場

2021年4月1日、富山市は富山市場用地123,138㎡全てを対象にした再整備事業の優先交渉権者に「新とやまいちば創生プロジェクトチーム」(以下;事業連合)を選定した。
民間が公設市場の全てを整備し、その一部を市が借りて公設市場を運営する民設公営となる。
今までの卸売市場整備にはなかったPPP(パブリック・パーソナル・パートナーシップ)の新たな方式であり、存続が危うくなった公設市場の対応の一つのあり方として注目を集めるだろう。

富山市場は2011年に中央市場から地方市場に転換したが、売り上げ減に歯止めがかからず、青果卸「富山中央青果」が事業等の失敗で破綻、整理回収機構の案件となった。
二社あった水産卸も「富冷」が「富山中央魚市場」を平成31年4月に統合し一社となった。

冨山市場は青果、水産、花き三部門を持つ総合卸売市場だが、市場取扱高は激減しており市場存続の危機となっていた。
今回の再整備事業は、趣旨としては市場再整備というより市場再建・維持の方策を模索してきた一つの結論だろう。

富山市が事業連合に対して委託する内容は以下の通りである。

  • 市場用地12万3千㎡の全てを対象に事業用定期借地権を設定し、事業連合に再整備事業を委託する
  • 事業連合は現在の市場を公設市場と「民間収益施設」に二分、全ての施設を建設する
  • 事業連合が整備し、施設完成後も事業連合が所有する
  • 富山市は完成した公設市場部分を事業連合から借り入れて運営する
  • 事業用定期借地権は2054年までの33年間
  • 富山市は事業連合に事業期間中総計48億円で貸し、事業連合に対し公設卸売市場部分の賃料124億円を支払う
  • 卸売市場の延床面積は現状の3万8千㎡の約半分、1万5千㎡の予定
  • 民間収益施設にはスーパー、ホームセンター等の商業施設を予定
  • 完成は卸売市場、民間施設とも2025年の予定